コラム 2022.05.30

【ラグリパWest】学校創立100周年、ラグビー部も呼応。宮崎県立高鍋高校

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】学校創立100周年、ラグビー部も呼応。宮崎県立高鍋高校
今年、学校創立100周年を迎える宮崎県立高鍋高校。冬の全国大会出場29回のラグビー部もその活躍で盛り上げにひと役買いたい。校内にある「闘魂の軌跡」は部史を伝える。その碑石に立つ中津留真ノ介主将(左)と檜室秀幸監督




 高鍋の街には気品がある。秋月氏3万石の城下町だった。宮崎県ではなく、日向と呼ばれた江戸時代である。

 高みにある城跡は舞鶴公園になっている。春は桜が美しい。園内には大クスがある。国指定の天然記念物。樹齢およそ500年だ。あずちもあり、弓を引く人もいる。

 街は南北に長い宮崎の中央にある。東は黒潮の流れる太平洋。温暖で物成りよく、人気(じんき)はいい。今は町制が敷かれている。

 ここにはまた高校ラグビーの名門のひとつ、高鍋がある。旧制中学ができたのは1923年(大正12)。今年は「学校創立100周年」として盛り上がりを見せる。

 ラグビー部の監督はOBでもある檜室(ひむろ)秀幸。保健・体育教員、そして同窓会の事務局長と3足のわらじを履く。
「1日24時間じゃあ足りません。去年は担任も持ちました」
 冗談を言い、面長な顔を緩める。

 100周年を意識するのは主将の中津留真ノ介(なかつる・しんのすけ)も同じだ。
「歴史に残る成績を出したいです」
 174センチ、80キロのウイング。宮崎ラグビースクールの出身で中学時代は県選抜の主将もつとめた。けん引力を内包する。

 ラグビー部が練習する校内グラウンドは300メートルのトラックが優にとれる。ここをサッカー部と分割して使う。檜室は話す。
「なんとか人工芝にしたいのですが…」
 29回出場した冬の全国大会、通称「花園」の通算成績は27勝29敗。白星を先行させるためには土からの人工芝化は必須だ。有望中学生が「ここでやるんですか?」と県外に流れ出た苦い思い出が残る。

 グラウンドは照明塔9基が囲む。夕方5時から2時間半ほどの練習は明るい中でできる。3年生の授業は5時40分に終わる日もある。
「一部、進学校ですね」
 檜室は説明する。この県立校は全日制共学で3学科構成。普通、探求科学、生活文化がある。

 ラグビー部から筑波大には3年連続して進学した。3年生の白栄(しらえ)拓也を筆頭に松本剛大(ごうだい)、湯浅大心(たいしん)がいる。部長の矢野義明はここから筑波大に進んだ。この学校の保健・体育教員は7人。そのうちラグビーが2人を占める。

 檜室は頭を使うことの大切さを口にする。
「勉強ができないとラグビーの時のひらめきがありません。状況判断を誤ります」
 この春、新入生18人が選手として入部してきた。中間テストの前には、大会直前にも関わらず、彼らのクラブ活動を停止させ、机に向かわせた。1年生の中には隈江隆希(くまえ・りゅうき)や檜室の長男・利輝(りき)がいる。隈江は7人制日本代表の下部組織、セブンズユースアカデミーのテスト生だ。

 選手の総数は53人になった。その内、18人が町内3か所で下宿している。檜室は妻の陽子と専用寮の運営を考えている。
「かみさんと土地や建物を見て回っています」
 妻は高鍋の同級生。ホッケー部の出身だ。

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