国内 2022.02.24

昨季の決勝カードは「祭典」にする。ワイルドナイツはサンゴリアスをどう見る?

[ 向 風見也 ]
昨季の決勝カードは「祭典」にする。ワイルドナイツはサンゴリアスをどう見る?
東京サンゴリアス戦へ向けて準備する埼玉ワイルドナイツの稲垣啓太(撮影:向 風見也)


 簡潔な言い回しに想像力の深さがにじむ。埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督が、画面越しに笑う。

「今週末は本当に素晴らしい試合になるだろうと、選手、スタッフ、コーチ陣一同、楽しみにしています。もしかしたら、ファンの方もそう思ってくれているのではないでしょうか。昨年は両チームともいい戦績で、今季もサンゴリアスもいい準備をしている。ラグビーの祭典と言えるような、素晴らしい一日になるでしょう」

 2月26日、リーグワンの第7節を戦う。指揮官の言葉通り、相手は東京サントリーサンゴリアス。昨年5月まであった最後のトップリーグのプレーオフ決勝と同じカードを、本拠地の熊谷ラグビー場で迎える。

 4日前は試合会場近くの本拠地で全体練習をおこない、おもに防御の立ち位置や出足、連係を強化。堅守速攻がチームのスタイルだ。

 夕方頃にグラウンドを引き上げるやオンライン取材に応じ、攻撃力を誇るサンゴリアスとのゲームの見どころを語る。

「どちらもポジティブないいラグビーをする。両軍とも昨季とほぼ同じようなメンバー構成でこの試合に臨むでしょう。そのなかでも、サンゴリアスは昨年のボーデン・バレットが抜けてダミアン・マッケンジーが加入していて…」

 サンゴリアスは昨季、ニュージーランド代表の万能BK、ボーデン・バレットを司令塔のSOで起用してきた。今季はやはり同国代表で、大型のバレットよりもフットワークの軽さが際立つダミアン・マッケンジーと契約。おもに最後尾のFBへ配している。
 
 過去にニュージーランドのクルセイダーズ、オーストラリア代表を率いたことのあるディーンズは、こう見立てる。

「どちらもワールドクラスです。マッケンジーは横の動きが得意で、それを警戒しなければいけない。マッケンジーは、昨年のバレットとは違う役割になるのかもしれませんが、FBからライン参加するのは脅威。バレットも、15番に入った時のほうがサントリーにとっていいラグビーができていました」

 チームは開幕直前にクラスターを発生させた。最初の2試合は不戦敗となった。左PRで日本代表の稲垣啓太は、リーグを代表する視点をにじませて言う。

「2試合が中止になってですね、選手はそれぞれ悔しい思いもしたでしょう。ただ、皆、(陽性者に)なりたくてなったわけじゃないですし、仕方ない部分もある。そこについてはもう、何も思っていないです。ただ、引き続き感染予防に努めなければ、我々の試合だけではなくリーグを成功させることができなくなる。これは、全チーム、選手、スタッフが引き続き心がけていかないといけないことです」

 活動再開後は4戦負けなし。ディビジョン1の12チーム中、実施した試合を1度も落としていないのはサンゴリアスとワイルドナイツだけだ。

充実した表情の堀江翔太(左)と福井翔大(撮影:向 風見也)

 東福岡高卒4年目でNO8として2戦連続先発中の福井翔大は、「怒ってくれる人が周りにいる環境はありがたいと思いました」。この日の練習では、ワールドカップ3度出場の堀江翔太に防御面のミスを指摘されたそう。熟練者の助言に謝辞を述べる。

「練習できちんと指摘してくれるから、試合でのミスを抑えられてるのかなと思います」

 右肩上がりのチーム状態について、稲垣は「堀江さんも(別な記者会見などで)言っていましたが、いままで積みあがったものが2週間で失われるわけではない」。ただし、こうも警鐘を鳴らす。

「文化として積み上げていたものが試合に出てはいるのですが、100パーセント出せているかと言えば、そうではない。この課題には取り組んでいるところです」

 具体的に気になるのは、反則の数と質。当日のレフリーの判定基準への対応力、ボール争奪局面での見極めを見直し、さらに順法精神を高めたいという。

「第3、4節はおそらくペナルティが10個以上あったと思うんです。第5節はやっと1ケタに減って、前節も1ケタ台だったのですが、まだ多い印象があります。なぜ多い印象があるか。それは、不用意なペナルティがあるからです。我々はディフェンスを強みとしていて持っているチーム。ディフェンスの最大の目的は、ボールを奪い返すこと。そのために争奪戦で(球に絡むなど)チャレンジすることは必要なんですけど――その判定にはレフリーが介入しますが――なぜ、その判断をしたのか、という、イージーなペナルティが多いんですよね。争奪戦に行くまでの立ち位置(境界線より後ろに下がらないこと)でのオフサイドを犯したり、レフリーが『もうこのシチュエーションは反則とみなします』という合図を出しているのにファイトをし続けてしまったり。これではペナルティが1ケタ台になったとしても、相手のレベルが上がるほど3点(ペナルティゴール)を奪われる。引き続き、僕は皆に、注意喚起を続けていきたいです」

 FW第3列で防御の引き締めが期待される福井は、当日の目標を聞かれれば「そういうことを考えすぎたら空回りしちゃうので、あまり考えないようにします」。

「できる限りの準備を1週間、やり切る。その、やり切る、ということを目標にします」

 ワイルドナイツにとって今度のゲームは、中盤戦きっての「祭典」であると同時に、進化の過程における貴重なレッスンの場でもある。 

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