『チチブノミヤ』の魅力と魔力。立正大、開幕連敗にも光さし込む。
劣勢からよく攻め続けた立正大。写真はFB吉澤太一主将。(撮影/松本かおり)
9月22日に行われた関東大学リーグ戦1部の東海大×立正大。昨季同リーグ王者にとって、2013年度シーズンの開幕戦だった。
59-32。昨季王者は勝った。しかし、勝者が試合の主役だったのは前半23分過ぎまでだった。立ち上がりに集中力を見せたのはさすが。しかし、特に後半途中からは防戦一方だった。前半23分で31点あったリード(31-0)は後半36分に6点差(45-39)。最後まで走り続けた立正大の粘りに冷や汗をかいた。
試合開始直後の東海大は強味を存分に活かした。立正大がキックを上げる。それを受けた石井魁、小原政佑の両WTB、FB近藤英人という快足バックスリーが走り、崩し、フィニッシュまで。快適な時間帯だった。選手たちが圧勝を予感したのも無理はなかった。
立正大は、相手の強味をよく理解していたが、立ち上がりからあえて蹴った。しかし思うようにプレッシャーがかけられず、いいように走られた。
FB吉澤太一主将が振り返る。
「はい。緊張で…。キックチェイスが甘くなってしまいました。修正してからはうまくいったのですが。プレッシャーをかけ、相手をうしろに走らせるキックも蹴れた。とにかく序盤が…」
そんな立正大が息を吹き返したのは、試合途中、インゴールで全員が声をかけ合ってからだ。
吉澤主将が、「チャレンジャー精神を忘れずに戦い抜こう。そう言いました。そして、自分以外の選手たちがチームを引っ張ってくれたのが大きかった」と言う。「いつもならそのまま沈み、後手後手に回ってしまうのですが、秩父宮での試合です。もう一度気持ちが入った。立て直せた。チームの成長を感じました。この先につながる試合になった」。
秩父宮の魅力と魔力である。
聖地に立つ緊張に浮き足だったけれど、そこでプレーできる誇りとよろこびに気持ちが折れなかった。
堀越正己監督は、たった80分の中でまったく別の顔を見せた選手たちについて、「何も言うことはない」と言った。初めての聖地で、持てる力を最後には出し切ったことを評価した。そして言葉を続けた。
「あれだけ(点を)とられたのも秩父宮(だから)。ウォーミングアップから浮き足立っていた。経験を積むしかないですね。東海大は今季初戦。うちは(後半息切れした)先週の法大戦で悪いところは出たので、チャンスはあると思っていました。ただ、先週はチャレンジャーの気持ちで120%の気持ちで試合に入っては行けたのが、きょうは90%だったかもしれませんね」
本来の顔を見せた時間帯の立正大は、よく意思統一されていた。サイズの大きな相手と真っ向勝負をしてはダメだ。よく走り、よくまわす。SOフンガヴァカ・ツトネ、両WTB鶴谷知憲、早川直樹、FB吉澤主将ら、抜くセンスに長けた選手たちは積極的に仕掛け、穴をあける。周囲が続いた。FWも走力勝負でブレイクダウンに体を張った。
最後まで戦い抜けた理由を問われ、吉澤主将は迷いなく、「キツイ走り込みをしてきたので」と言った。
「ただ、もっとミスを減らさないと勝てない。ペナルティーも。スターはいないチーム。一丸となって一生懸命走り、一生懸命タックルする。目標の大学権選手に出たい」
「熊谷も立派なラグビー場ですが、僕らにはホームの安心感があるんです。でも秩父宮は、スタンドがせり立っている感じで…ドキドキしました。でも、気持ちよかった(笑)」
誠実なキャプテンのコメントは、チームみんなの声でもある。
開幕2連敗も、立正大には光がさし込んでいる。