海外 2021.12.13

フランスではボルドーが好調。トップ14首位、欧州チャンピオンズカップでも注目。

[ 福本美由紀 ]
フランスではボルドーが好調。トップ14首位、欧州チャンピオンズカップでも注目。
トゥールーズ戦でスクラムからボールを出すボルドーのSHマクシム・ルク(Photo: Getty Images)


「チームにとって重要な試合だった」とボルドーのクリストフ・ユリオスHC(ヘッドコーチ)が試合後の記者会見で述べた。

 この日、ボルドーは昨年度チャンピオンのトゥールーズをホームに迎えた。昨季、トップ14のリーグ戦で2度、同準決勝、ヨーロピアン・チャンピオンズカップ準決勝と、4度対戦して1度も勝てなかった相手を80分間フィジカルで圧倒し、トゥールーズのSHアントワンヌ・デュポンを完全に封じ込め、17-7で勝利し、トップ14の順位でもトゥールーズを抜き首位になった。

「チームのアイデンティティを進化させる上で大切な試合だった。シャバン=デルマス(ボルドーのホームスタジアム)に来てくれていた33,000人のサポーターの前で、昨季勝つことができなかったトゥールーズに絶対勝たねばならなかった。クラブの、市の、地方のアイデンティティがかかっていた」とユリオスHCは続けた。

 元フランス代表WTBのセドリック・エマンスが、「この試合は、フランス代表にとってニュージーランド戦がそうだったように、ボルドーにとっては進級テストのようなもの。自分たちの成長を試すための大切な試合だった。この試合に勝ったことで、トゥールーズのような強豪チームには勝てないというメンタルブロックから解放された」と解説する。

 ボルドーのロラン・マルティー会長は、就任以来13年かけてこのクラブを築いてきた。正式名称はユニオン・ボルドー・ベーグル。2006年にボルドーの大学のクラブと、ボルドー郊外にあるベーグル市のクラブチームが合併して誕生した。2つのクラブはライバルだった。合併には反対意見もあったが、経済的にも恵まれた地域で、企業は地元のラグビーチームを支援したいがどちらにつけばいいのか戸惑っていた。合併すればみんなが一つのチームを支援してくれるようになり、より強いチームがつくれるというのが合併支持者の意見だった。ベーグルが在籍していた2部リーグからスタートし、2011年にトップ14に昇格した。

 マルティー氏もラグビー経験者で、トゥールーズのジュニアチームでプレー経験があり、「トゥールーズをモデルにした。スピードがあり、ボールを回してどんどん攻めるラグビーがしたかった」と明かしている。

 SOマチュー・ジャリベールやFLカメロン・ウォキのような才能溢れる若い選手が育ち、スター選手のいないカストルをトップ14優勝に導いた実績を持つユリオスHCが2019年に着任した。そのシーズンのトップ14が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった時、ボルドーは首位だった。翌年は初の準決勝進出を果たした。今季も開幕節のビアリッツ戦ではつまずいたものの、その後すぐに立て直し首位争いを続けてきた。

 ユリオスHCは「ボルドーや、その地方の人に愛されるラグビーをしなければならない」と、クラブだけではなく、市や地方の歴史とアイデンティティにこだわった。その結果、地元の人に愛されるクラブになった。この日、チームバスがスタジアムに到着すると、雨にもかかわらず大勢のサポーターがチームの会場入りを盛り上げるために集まっていた。試合中は最上段まで埋め尽くされたスタンドから絶えず熱い声援が送られ、試合後も強敵を破った喜びを選手と分かち合う観客でいつまでも賑わっていた。時計は23時をまわっていた。

 先週末と今週末はチャンピオンズカップのプール戦だ。ボルドーは、今季イングランドのプレミアシップで無敗、首位を独走するレスターと第1節で対戦。「レスターは近年降格の危機にまで陥ったが、スティーブ・ボーズウィックがHCに就任してからクラブのアイデンティティを取り戻した。キックを多用しながら強いFWで激しく勝負してくる。タフな戦いになる」とユリオスHCは分析していたが、13-16で惜敗した。

 フランスでは、「チャンピオンズカップはトップ14とテストマッチの中間のレベル」とよく言われており、「強度、スピード、ランメーターでギアを上げなくてはならない。しかも4試合でプレーオフ進出が決まるから勝ってポイントを獲らなければならない」とユリオスHCは言う。また、対戦相手もスタジアムもレフリーもトップ14の日常から離れ、選手たちの気分も上がる。ファンも心待ちにしていた大会だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始めているのが気になる。選手の健康第一に大会が運営されることを願う。

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