【ラグリパWest】ラグビー・スピリッツ。西村将充 [コカ・コーラレッドスパークス元採用担当]
チームが消えても、ラグビーで培ったそのスピリッツは残る。西村将充(まさみつ)は言う。
「ラグビーのよさは自己犠牲の精神。嫌なところに飛び込む。率先してやる。セービングはその最たるものですね。ラグビーをやってよかった。よかったですね」
形容詞を重ねるところに満足感の高まりがある。コカ・コーラレッドスパークスでは現役引退後、採用を任された。現役時代はセンター。177センチ、90キロの体を利したコンタクトプレーを得意とした。
今は福岡・薬院で社業に専念する。コカ・コーラ ボトラーズジャパンのCSV推進部にいる。アルファベット3文字は<Creating Shared Value>の略である。
「簡単に言うと、社業を通じて、社会課題を解決していく部署ですね」
企業として利益のみを追うのではなく、その社会的な存在意義を考え、行動する。今年11月には東福岡の付属中である自彊館(じきょうかん)で、取り組んでいる海洋プラスチックボトル問題について話したりもした。社として新しい分野でも躊躇せず飛び込む。
西村にはもうひとつの顔がある。ウエイトトレーニング器具を扱うザオバのセールスアドバイザーだ。
「会社には兼業制度があります」
赤色が鮮やかな<BULL>のブランド。ラグビー界では日本代表やHonda HEATなどが導入している。
「大学生のリクルートで夏合宿の菅平に上がった時にブースが出ていました」
仕事の合間にトレーニングをさせてもらう。44歳の今でも、ベンチ160キロ、スクワット230キロを差し挙げる。
「廃部の時、心配したザオバの人から電話をもらいました。その時に、よかったら手伝ってもらえないか、と話がありました」
廃部の公式発表は今年4月30日。トップリーグから新装されるリーグワンへの参入を取り下げる。理由は本業の飲料ビジネスに特化することによる改革の一環と説明された。コロナ禍による業績悪化もあった。
レッドスパークスの創部は1966年(昭和41)。当時、17社あったボトラー社のひとつ北九州が作った。各ボトラー社はコカ・コーラの原液を現在の日本コカ・コーラ社から買い、販売する。フランチャイズ制だ。4年前、ボトラー社は5つに収れんされ、西村の所属するコカ・コーラ ボトラーズジャパンは最大になった。北海道、東北、北陸、沖縄以外を傘下におさめる。その結果として、ラグビーへの関心は薄くなる。56年目でチームは消滅する。
「発表の2日前に話を聞きました。無名の僕を引っ張り上げてくれ、めしを食わせてくれたクラブ。非常に残念でした。ただ、会社の人たちも考えた末のことでしょう。気持ちを切り替えていくしかありません」