松韻福島、決勝の横顔。「いまラグビーを続けているからこそ自分の身体があるし、皆の思いがある」 [福島県花園予選準優勝]
あっけにとられた。意外な幕切れのためだ。
松韻福島高ラグビー部3年の渡邉俊太は11月13日、地元のJヴィレッジスタジアムにいた。全国大会の県予選決勝でラストワンプレーを迎え、敵陣22メートルエリア左でラインアウトを獲得。得意なモールを組み、同点に追いつくチャンスだ。
現実は厳しかった。投げ入れられたボールはそれ、対する磐城高が確保。すぐに蹴り出す。ノーサイド。24―17。
HOで先発した渡邉は、突然の終幕に唖然とした。現実を受け入れたのは、直後の表彰式が進む最中だった。味方の投入役と捕球役は責めず、ただただ実感を述べる。
「正直、現実味がなかったです。あ、終わっ…た…んだ…と。勝っても負けてもこういう気持ちになったとは思いますが。整列する時に悔しさや3年間の思いがのしかかって、(準優勝の)メダルが首にかかった時は、頭があがらなかった。重かったです」
2年連続での優勝を目指していた。3年生部員のうち、中学以前の競技経験者は1名だけ。初心者の多いクラブとしてビクトリーロードを歩むべく、確たる長所を磨いてきた。
球を持てば10名以上がそのエリアに集まり、じっくりとモールを組み込む。反則を誘う。もちろん接点周辺からのボックスキック、狭いエリアをえぐるフットワークも授けたが、青年たちはモールをよりどころにした。磐城高との決勝戦でも、ゆったりした密集戦をきっかけにトライを奪う。前半終了間際までは12―12とクロスゲームを演じた。
背景には、地道な反復練習がにじむ。田中瑞己監督は、敗戦に涙を流した。
「たくさん練習をして、ものすごく上手になったと思うんです。全員が途中で辞めたいと言っていて、それでも辞めずに、人生を賭けてやってきて…。よく頑張った」
高校に入るまで空手、柔道をしてきた渡邉は、指揮官の間接的なねぎらいに「そうですね…」と頷く。一度も退部を検討しなかったかと言えば、嘘になる。それでも毎日グラウンドへ通ったのは、ラグビーを選んだ自分を、仲間を、裏切れなかったからだ。
「僕の代はもともと12人いたのですが、自分と同じクラスの奴が1人、辞めて、『俺らも辞めねぇ?』となったこともあります。自分たちが痛くてきついことをしているなか、周りの人間は放課後になれば遊んでいて。でも、我慢してよかったな、とは思います。あそこでチームを捨てていたら、何も残らなかった。いまラグビーを続けているからこそ自分の身体があるし、皆の思いがある。チームは家族。一生の宝物だと思います」