国内 2021.11.24
松韻福島、決勝の横顔。「いまラグビーを続けているからこそ自分の身体があるし、皆の思いがある」 [福島県花園予選準優勝]

松韻福島、決勝の横顔。「いまラグビーを続けているからこそ自分の身体があるし、皆の思いがある」 [福島県花園予選準優勝]

[ 向 風見也 ]
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 個々の技能や展開力に長ける磐城高を相手に、松韻福島高は執念を示した。一時は12―24とやや差をつけられたが、2番をつけた渡邉は得意のジャッカルで相手の球出しを遅らせる。

 残り10分に差し掛かったタイミングで、向こうの反則により敵陣中盤右でラインアウトを得る。局地戦を重ねる。さらなるペナルティーキック獲得でゴール前右まで進み、最後は渡邉がゴールラインを割った。24―17。1トライ1ゴールで追いつける点差にして、最終局面を迎えた。

 あの瞬間、ラストチャンスを得られたのも、グラウンド中盤から必死でモールを組みこもうとした結果だ。さらにさかのぼれば、そのグラウンド中盤でプレーできたのは渡邉のファインプレーがあったからだ。 

 後半28分頃、自陣での防御局面で背番号2がジャッカル。逃げ切りを図る磐城高に、ノット・リリース・ザ・ボールの反則をさせた。ガッツポーズを作った。

 その数十分後。涙を拭き、相手のロッカールームで挨拶を済ませると、渡邉は努めて笑った。

「初めて高校で団体競技をやってみたら、本当に難しくて。自分だけがよければいいわけではないので、チームに気を遣いながら自分もレベルアップさせないといけない。ただ、自分がミスしたところを味方がカバーしてくれることもある。皆の気持ちはどうかはわからないですが、きょうは誰も負ける気持ちはなく、前を向いてやれたのかなと思います」

 ひと段落ついたら、ラグビー部のスポーツ推薦がある大学の試験を受けるつもりだ。決勝前は本格的なプレーを高校までにすることも検討していたが、表彰式で泣いているうちに決意が固まったという。

【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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