「アドレナリンがチームにみなぎっていた」。オス・ロボス、ポルトガルラグビー最大の観衆を集める
この年代のポルトガル代表の選手にとって、最大の強敵である日本代表。エスタディオ・シダーデ・デ・コインブラには、史上最大の1万4000の観衆が集まった。ポルトガルラグビー協会は、この日はアマチュアラグビーの試合を一切おこなわずに、代表チームを応援しようと指揮を執った。
「日本を相手に、どれだけの攻撃力と創造性を見せられるかが勝負です。先週倒したカナダ代表はパワーはありましたが、スピードはありませんでした。この試合では、我々のディフェンスが日本代表のスピードにどれだけ対応できるかが試されます」
前週、カナダ代表を20-17で下したポルトガル代表のパトリス・ラジスケ監督が、日本代表戦を前に地元メディアに向けた会見で残した言葉だ。
ブレイブ・ブロッサムズを相手に25-38という結果は、オス・ロボス(ラグビーポルトガル代表の愛称)にとっては健闘と言える結果だった。
スタジアム内のセキュリティの一部をボランティアの学生がおこなうという牧歌的な運営で行われたこの試合。ビールを持った一般客が記者席に入り込み、机を叩きながら大声で歌い出すなど、ポルトガルサポーターにとっては大いに盛り上がる試合だった。
日本が先制し、その後一旦は逆転に成功したポルトガルだったが、やはり日本が上手の試合展開となった。
逆転を狙うポルトガルは、後半に日本陣22メートル内で何度もペナルティーを得た。しかしそこでPGを蹴らずに、ラインアウトでトライを狙いにいくポルトガルは、見事にトライを奪った。
「トライをとれる自信があってこその選択でした。試合にも勝てる自信がありましたし、アドレナリンがチーム全体にみなぎる瞬間でした」
試合後の会見で、キャプテンのトーマス・アップルトン(CTB)は惜敗の悔しさと充実感が入り混じったような表情でこの場面を振り返った。
「正直言って、選手たちがここまでやってくれるとは思っていませんでした。勝つことはできませんでしたが、今日の試合は代表チームとして最高の出来でした。本当に、選手たちを誇りに思います」。
試合後の会見で、監督は選手たちのプレーを誇らしげに称えた。
2021年ラグビーヨーロッパチャンピオンシップを2位で終えたポルトガルは、来年の同大会でも2位以内に入れば、2023年ワールドカップ出場が決まる。同大会の2年間の合計勝ち点上位2チームに与えられる欧州1、2の出場枠だ。3位のチームにも大陸間プレーオフ経由でのチャンスが残される。
誰も知らなかったポルトガル代表のラグビーを、日本のファンたちの脳裏に強烈に刻みつけたオス・ロボス。フランス人のラジスケ監督に率いられたこの世代の代表チームは、2007年以来のワールドカップ出場を、現実的な目標として本気で目指している。