セブンズ 2021.07.13

フィジカル強化で挑む 東京五輪ラグビー韓国男子代表

[ 見明亨徳 ]
フィジカル強化で挑む 東京五輪ラグビー韓国男子代表
元ホンダの梁コーチ。日本でチームの成長を見せたい(撮影:見明亨徳)


 いよいよ2週間後の7月26日に始まる「東京2020五輪ラグビー競技」。
 韓国で調整中の韓国男子代表コーチ2名が取材に応じた。

 元ホンダヒートSHとして活躍した梁永勲(ヤン・ヨンフン)コーチは2016年以来、15人制と7人制代表のコーチを務めてきた。韓国ラグビーの歴史に五輪出場という快挙を記す下支えをおこなってきた。

 しかし悩みは尽きない。6月に18名の候補選手を連れて、米国ロサンゼルスでおこなわれた「クエスト フォア ゴールドセブンズ」に出場した。この大会では五輪予選プールAで競うアルゼンチンに初日0-49。2日目も0-55と連続の完封負けを喫した。

「アルゼンチンはキックオフのアタックが素晴らしかった。韓国は何もできなかった」と振り返る。大会で痛感したのは世界との差だった。「フィジカルがまだまだ足りない」。

 帰国後、7月6日から代表選手13名にフィジカル強化を課している。「1日の練習は午前中9時30分から1時間程度、システムやゲームなどをしている。午後はウエートが中心です」。

 最終メンバー13名中11名が2019年11月に五輪切符を勝ち取った「東京五輪アジア最終予選」のメンバーだ。新たに加わったのは7人制でフォワードを担当する唯一の大学生チェ・ソンドク(慶煕大4年)と15人制ではCTBの金洸民(キム・グァンミン、韓国電力)。特にチェについては「フィジカルが強い」という評価だ。

 韓国は東京五輪のプールAでニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンと同じ組だ。ニュージーランドとは初日の最初の試合で当たる。2016年リオデジャネイロ五輪で日本がニュージーランドを破り4強入りするきっかけをつかんだ。「ニュージーランドとオーストラリアが最近、試合をしました。その映像を取り寄せて分析しています」(梁コーチ)。

セブンズの理論を支えるチャールズ・ロウ氏(撮影:見明亨徳)

 韓国代表の理論的な支柱となるのはチャールズ・ロウ氏。流経大でコーチを務め、流経大と韓国ラグビー界の縁で、アジア最終予選では実質的なコーチ役を担った。そして今年4月15日に韓国代表の「ゼネラルマネジャー兼パフォーマンスコーチ」として契約し指導にあたっている。

 2年前、1日3回のミーティングで世界の最新セブンズ理論を選手たちに覚え考えさせた。当時、朴玩龍(パク・ワンヨン)主将は「アタマがいっぱいになった」と話していた。この2年間で韓国選手たちの7人制ラグビーを理解するアタマは「良くなった」。しかし世界から比べると低いのは実情。現在も毎日「20~30分間はミーティングをしています」(チャールズ氏)。
 チームのコンディションは順調に上がってきているが、強豪に勝つのは「実際は難しい」とチャールズ氏は話す。

 韓国選手のキーマンをチャールズ氏に聞いた。真っ先に韋駄天コンビ2名をあげた。NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの快速WTB張容興(チャン・ヨンフン)と2020年春まで日野レッドドルフィンズに在籍した鄭演植(チョン・ヨンシク)だ。ヨンフンはSH、SO。ヨンシクはWTBとHOでの起用になる。
 精神的にチームを鼓舞するベテラン金ヒョンスと韓建圭(ハン・ゴンギュ)にも期待する。また、チェ・ソンドクには「ハイボールキャッチ」で空中戦を制する役割を与えるようだ。

 韓国チームは7月21日に東京へやって来る。練習試合の予定はない。翌22日、23日、25日と首都圏にあるトップリーグチームのグラウンドで最終調整をおこなう。

 チャールズ氏を快く韓国に送りだした流経大ラグビー部。「応援している。頑張って下さい」(内山達二監督)。韓国7人制代表OBでもある池英基(チ・ヨンギ)コーチは「韓国を支援してくださってありがとうございます」とメッセージを届けている。

 7月26日、午前10時。韓国ラグビー界にとり新時代を創るキックオフの笛が鳴る。

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