【ウイダージャパンセブンズ2013】鉄人、松田努。「没頭」の27年。
やり切った男の表情は澄んでいる。松田努、27年の現役を終えた。(撮影/松本かおり)
仲間の気持ちが、その回数に表れていた。
『ウイダージャパンセブンズ2013』を最後の舞台にピッチを去った鉄人・松田努(トップリーグ最年長出場記録保持者/41歳9か月)が、大会終了後に何度も宙を舞った。背負い続けた背番号と同じ15回の胴上げに、スタンドからもあたたかな拍手がおくられた。
最後の最後にリコーに26-28で敗れたものの、ファイナルまで勝ち進んだ東芝。松田は決勝戦も後半に出場し、必死で勝利を追い求めた。
「一度は辞めた身なのに。(最後まで)勝つか負けるか、の試合をやれたのがうれしいですね。もっと動ける人が出ていたら勝てたかもしれないのに申し訳なかった。でも、僕自身は楽しかったですよ」
記者会見に臨んだその表情は穏やかだった。
周囲が、華やかな舞台を用意してくれたことに深く感謝の気持ちを示した。
「大学時代から秩父宮でプレーできるのは喜びでした。セレモニー、胴上げ。誰もができることではないですよね」
決勝戦ではMVPに選ばれたリコー・横山伸一に抜かれたが、それを振り返る表情さえ柔和なのは、勝負の世界から離れるからこそだろう。
「(外を抜かれぬように)かぶろうと思ったのに、それ以上に速かったです(笑)。後半10分だけなら、と思ったけど…きつかった。体は動かしていたし、今週に入ってチームの練習に加わったのですが、3か月本格的にやっていなかったので、木曜日に膝が怒ったような感じになったんです。これまで休んでおいて…という感じで。そこから練習量を落として、なんとか今日プレーできました」
「(賞金)100万円のことは忘れて没頭していた」と最後の一日を笑顔で振り返った43歳。草加高校(埼玉)、関東学院大、東芝、そしてジャパンと27年間没頭し続けたから、誰より長く輝けた。