セブンズ 2013.05.27

【ウイダージャパンセブンズ2013】MVP横山伸一、「東北を忘れないで」

【ウイダージャパンセブンズ2013】MVP横山伸一、「東北を忘れないで」

頂点に立って歓喜の抱擁。MVPに輝いた横山伸一。(撮影/新屋敷こずえ)

 

 山形出身のヒーローは、「個人的な思いですが」と前置きしてから言った。
「全額とは言わないまでも、東北出身者として(いくらかの額を、チームから)寄付していただけたら」

 

 国内初の賞金大会(男子 カップトーナメント優勝:100万円、準優勝:30万円)として注目された『ウイダージャパンセブンズ 2013』が5月26日に秩父宮ラグビー場で開催され、リコーがカップ(最上位トーナメント)優勝を飾った。MVPに選ばれたのは、大会を通して走りまくった横山伸一。賞金の使い途を尋ねられて、冒頭の言葉を口にした。

 

 東芝とのファイナルは28-26とクロスゲームだった。横山が接戦にケリをつけた。残り1分強。21-26の劣勢から左ライン際を駆け上がり、インゴール中央にボールを置く。コンバージョンも決まる。残り数十秒を守りきり、歓喜の瞬間が訪れた。

 

 爽快な走りを見せ続けた横山に代表されるように、大会を通して誰もがノビノビとプレーしたリコー。優勝記者会見に臨んだ田沼広之コーチは、「まず、参加できたことがよかった。もともとの定義(昨季トップリーグトップ8)でいけば参加できなかったのに、他チームの事情もあって参加できることになりました。日頃やっていることを出せる場が増えた。そういうふうに、チャンスと考えて取り組みました。若いメンバーも力が出せたし、本当によかった」と笑顔を見せた。
 今大会の出場メンバーは、チームの練習メニューを終えた後に『セブンズ練習』を追加して準備を重ねた。同コーチは、「トップリーグでも、あの位置(表彰台)に立てるように精進したい」と言葉を継いだ。

 

 今大会でキャプテンも務めた横山は、心から大会を楽しんだ。そんな胸中が言葉の端々から伝わった。
「『優勝』を目標に掲げず一戦一戦たたかおう、と。自分たちは何がやりたいのか、それを突き詰めた結果です」
 決勝での快走が、この日でピッチを去る東芝・松田努を抜き去ってのものだったことについては、「狙っていた、なんてことはありません」と頭をかいた。
「復興支援の(2年前の大会=セブンズフェスティバル)ときも釜石に勝って(コンソレーション)チャンピオンになったので、きょうも松田さんに勝っちゃうんじゃないかな…という気がしていたのですが(笑)。でも、真剣勝負の中でしか得られないものを、今日も得られたと思います」

 

 セブンズ日本代表にも「ぜひ復帰したい」と語ったスピードスター。東北を思う心。チーム愛。そして、セブンズへの意欲。いろんなものを背負っていたから、何度も何度も、トライラインに向かって疾走できたのかも。

 

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