コラム 2021.06.10

【ラグリパWest】残念も憧れも上達の糧。関西大倉高校[大阪府]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】残念も憧れも上達の糧。関西大倉高校[大阪府]
関西大倉高校のラグビー部。土井川功監督(2列目左)、有積廣晃コーチ(2列目)、永原宏信主将(前列左から5人目)を中心に勉強とラグビーの両立を目指す



 この時期、北摂の山並みは緑でまぶしい。関西大倉はその稜線に沿った大阪の茨木(いばらき)にある。

 来年、学校は創立120周年を迎える。「カンクラ」は私立男子校として出発。今は併設の中学もでき、共学にもなった。普通科のみ3つのコースのトップは偏差値70。この少子化の時代、中高の生徒数は2000人を超える。スクールバスはJR茨木など5駅に走る。

 勢いあるこの進学校にもラグビー部は存続する。スポーツ推薦のない中、指揮を執るのは土井川功(どいかわ・こう)。33歳の青年監督であり、保健・体育の教員でもある。

「ウチは未経験者が8割。生徒はみんな勉強するために来ています。ですから生徒たちが考え、実践するラグビーを目指しています」
 怒声は響かない。練習は1時間30分ほど。今はコロナの影響で完全下校が18時。通常より30分短くなる。土曜は授業もある。

 選手は2、3年だけで21人。そのチームが4月に始まった大阪府総体(春季大会)で2勝した。予選プールで淀川工科を24−12、合同C(大阪市立、寝屋川、大手前)を19−7と連破。淀川工科は全国大会出場13回を誇る公立の雄のひとつである。

 1年生5人が安全面から出場できない府総体の成績は、秋の全国大会予選の組み合わせに直結する。3地区にはそれぞれ成績順にABCの3つのシード校が置かれる。AとBは1校、Cの2校は準決勝で当たる。

 関西大倉は初めてCシードの6校に入る可能性があった。順位決定トーナメントで上宮太子(うえのみやたいし)、そして、大阪朝高を連破すれば、だった。そのトーナメントが中止になった。非常事態宣言発出による。

「挑戦権がなくなったのは厳しいです」
 土井川は視線を落とす。選手の安全安心という趣旨は理解できる。ただ、勝敗を別にして、力上位との戦いはチームの成長に欠かせない。差を体感。また鍛錬をする。その機会が失われる。残念さが残った。

 土井川自身、その指導にわずかながら手ごたえも感じてきていた。
 木田晴斗。教え子の存在が大きい。日本代表の下に位置するジュニア・ジャパン。速さと強さを兼ね備えたWTBは、この中高から立命館大に進学する。最終学年の今年は黄紺ジャージーの主将についた。
「僕らの憧れ。スーパースターです」
 主将でFLの永原宏信は目を輝かせる。

 土井川は木田と過ごした6年間を振り返る。
「彼はモノも姿勢も違いました」
 宝塚ラグビースクールでの経験者として入学。当時、中学のラグビー部は休部状態。木田は2人から同級生らを口説く。3年時には20人を集め、単独出場を可能にさせた。

「小学生の時、空手の国際大会で優勝したように、体育は常に5。数学も5でした」
 立命館大はOBである広野秀之が副部長をつとめる関係もあって動く。情報理工学部にラグビーを絡めてすすめた。
「去年の夏も練習に来てくれました」
 国内屈指になっても母校を思いやる。それは、土井川の指導への懐かしみでもある。

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