素朴な新人賞候補。トヨタ自動車の秋山大地、日本代表入りへの課題と手応え語る。
人柄がにじむ。
「…恐れ多いです」
トヨタ自動車ラグビー部の秋山大地が表情を崩したのは、3月2日のオンライン取材で「大物外国人に負けない強みは何か」と聞かれたからだ。チームは元ニュージーランド代表主将のキアラン・リード、現役オーストラリア代表主将のマイケル・フーパーを擁する。
入部2年目の24歳はやや微笑み、かすかに矜持を示す。
「何だろう…。『こうしていきたい』と思う点は、LOとして泥臭くやり続けることです。1、2戦目ではコンタクト、タックルの部分は通用していると思えたので、チームの勝利を導くタックルを80分やり続けたいです。…すみません、答えになっていないかもしれないですけど」
2月20日からの国内トップリーグで渋く光る。
相手の縦突進をロータックルで押し返す。接点の隙間へ腕を絡めペナルティキックを得る。空中戦の要となるLOとして常に先発し、地上戦でも際立つのだ。
昨季はリーグ不成立だったため、2季目の選手にも新人賞の受賞資格がある。現在、2戦続けてマン・オブ・ザ・マッチに輝いているのは同期のWTBで1本ずつトライを決めた高橋汰地だが、殊勲の秋山もタイトルを目指す。
「同じチームの高橋汰地には『マン・オブ・ザ・マッチに選ばれるくらいにハードワークし続けることが大事だ』と思わせてくれます。新人賞、獲りたいです」
平時のジムワークでは、肩に重りを担いで飛び上がり瞬発力を磨く。就任2年目のサイモン・クロン ヘッドコーチいわく、「(S&Cの担当者とともに)彼の持っている足のパワーの強みを活かせるようにした」。帝京大から加わった昨季と比べ、身長192センチ、体重110キロの身体は機能的に使われているようだ。本人は言う。
「前までは筋力トレーニングを特に頑張っていたのですが、今季は鍛えた筋力を爆発的に伝えること、身体の使い方を意識して練習してきた。それが少しずつ出てきていると思います」
3月6日の第3節では兄・陽路のいるホンダと激突(愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)。視線の先には開幕3連勝と新人賞の獲得、さらには初の日本代表入りも見据える。
帝京大の主将時代から、2023年のワールドカップ・フランス大会出場を狙うと公言してきた。このほど、改めて述べる。
「日本代表になるのは憧れですし、ワールドカップ出場は夢でもあります。自分の叶えたい目標には、熱い気持ちを抱いています。達成するために必要なのは、ハードタックルを繰り返してできるフィットネス、ラグビーの戦術理解度を上げることです。特に(プレーを)分析、理解し、試合中に課題を改善する力が足りていない。(一方)低いプレーができるところは、強みだと思います。タックル、ブレイクダウン(接点)での低いプレーでハードワークし続ければ、チームに貢献できると思います」
徳島県出身。兄に影響されて貞光工高(現つるぎ高)でラグビーを始めた元野球部員は、好物に「祖母のオムライス」を挙げる。薄い卵の中身はケチャップライスではなく、ちくわの入ったチャーハン。飲食店ではまず、出てこない。
他にはない素朴な味わいを好む次世代の星が、地面の上で独自の輝きを放つ。