世界的スターはトップチャレンジにも。近鉄、今季2勝目。清水建設、九電は初勝利。
無人のスタンドも、ピッチの上はバチバチだった。
激突音が響く。互いに掛け合う声も聞こえる。今季のトップチャレンジリーグは変則日程で各チームの試合数が少なくなった。すべてが負けられない一戦だから、互いの闘志がぶつかり合った。
2月28日、各地でトップチャレンジリーグがおこなわれた。秩父宮ラグビー場では同リーグAグループの清水建設ブルーシャークス×釜石シーウェイブス、近鉄ライナーズ×栗田工業ウォーターガッシュの2試合がおこなわれた。
第1試合の清水建設×釜石は21-20の接戦だった。前半に貯金した青いジャージーのSOを務めたのは、元オールブラックスのルーク・マカリスター(キャップ30)。それを活かし、最後は釜石の猛攻を振り切って勝利を手にした。
勝者は見事な先制パンチを繰り出した。試合開始のキックオフ直後は攻め込まれた清水建設だったが、自陣ゴール前でボールを取り返すと、思い切って攻めに転じた。
FBコンラッド・バンワイクが大きくゲイン。敵陣深くまで攻め込む。最後はWTB尾﨑達洋主将が切れ込み、インゴールに入った(前半2分)。
この試合、バンワイクは大暴れだった。先制点のきっかけを作った8分後には、ラインアウトからの攻撃を仕上げる走りで自らトライを奪う。
前半終了間際には、ふたたび自陣ゴール前から攻めた。WTB森谷直貴の激走をサポートし、背番号15がまたも走り切る。21-10とリードしてハーフタイムを迎えた。
後半は釜石の時間となった。
ほとんどの時間を清水建設陣で過ごし、18分(WTB関東申峻)、33分(FB村井佑太朗)と2トライ。わずか1点差に迫った。赤いジャージーは、そんなシーンを最後の最後まで続けた。
しかし勝ったのは清水建設だ。敗者は決定力を欠き、トライラインを越えるまで時間をかけ過ぎた。コンバージョンキックが決まらなかったのも痛かった。
清水建設の大隈隆明監督は、「(釜石の)前の試合を見てBKで勝負しようと考え、そこに外国人選手を配置した効果が出た」と話した。尾﨑主将は「前半にいい流れでアタックをできたのがよかった」と、滑り出しの良さが奏功したと言った。今季初勝利に笑顔だった。
釜石のスコット・ピアス ヘッドコーチとCTB小野航大共同主将は、「フィフティーフィフティーのパスを多くしてしまった」とミスを嘆いた。連勝を逃し、唇を噛んだ。
近鉄と栗田工業の一戦は、52-11と差が開いた。
しかし、前節の敗戦からいくつかの課題を修正した栗田工業は、前半途中まで踏ん張ってみせた。キックオフから約30分は競った(6-7)。
◆試合後、穏やかな表情で勝利を喜ぶ近鉄SOクウェイド・クーパー
「ボールにプレッシャーをかけ続けるようにした」(月田伸一ヘッドコーチ)栗田工業は、個々に力のある近鉄を自由にさせなかった。
「一人目がしっかりタックルし、2人目もファイトする」
それを意識し続け、相手を走らせなかった。
しかしパワーで上回る近鉄は、前半30分からそれまで以上に力強くプレーし、SHウィル・ゲニア、SOクウェイド・クーパーの元豪州代表HB団がボールをよく動かした。
ハーフタイム前の10分で3トライを奪い、後半序盤の時間帯も制す(2トライ)。
試合終盤はモールで2トライを追加し、結果的に大量得点を記録した。
近鉄は今季、トップ8を目指している。トップチャレンジリーグで4強に入れば、トップリーグ16チームに加わってトーナメント戦に参加できる。そこで勝ち上がっていきたい。
その到達点を見すえ、有水剛志ヘッドコーチは、「攻守とも、もっと局面局面で厳しいプレーを選択できるようにならなくてはいけない」と話した。開幕からの2連勝にも、さらなる進化を求めた。
Aグループ(4チーム)、Bグループ(5チーム)に分かれてリーグ戦を戦っているトップチャレンジリーグは、この日までにAグループが各チーム2試合を戦い、近鉄が2勝と一歩リードした。
Bグループは2月27日に中国電力を49-12と破ったコカ・コーラが開幕3連勝でトップに。この日(28日)は、九州電力がマツダに15-14と辛勝し、今季初勝利を挙げた。
九州電力は後半43分にFB荒牧佑輔が逆転PGを決めての勝利。マツダWTB李修平が後半51分に狙ったPGは外れ、劇的な幕切れは叶わなかった。