各国代表 2021.02.05

シックス・ネーションズ始まる(2) 大会を彩る若きフランスを見よ

欧州伝統の大会、シックス・ネーションズが2月6日に開幕。今回は最注目国フランスの最新情報をお届けする。前回登場のNTTコム所属、グレイグ・レイドローも優勝候補に挙げる期待感。「コーチが変わり、たくさんの若手が成長中で、世界のトップ5に入るチームになる」と予想する。2023年、ワールドカップの自国開催を控え勢い増す「レ・ブルー」をチェックしよう。

シックス・ネーションズ始まる(2) 大会を彩る若きフランスを見よ
シャルル・オリヴォン主将は、身長2㍍弱のFL (Photo/Getty Images)

主力の離脱も、指揮官はタフ。

 2019年W杯日本大会後、これほど世間の評価を変えたチームは他にあるまい。

 2020年シックス・ネーションズ2位、オータム・ネーションズカップ準優勝。見る者に高揚感を与える、レ・ブルーらしさが戻ってきた。フランス国民ですら期待していなかった2019年大会とは打って変わり、早くも2023年W杯自国開催大会の優勝候補に挙げる声が、それも国外から聞こえてくるまでに、劇的な変貌を遂げている。

 2010年以来遠ざかっているシックス・ネーションズ制覇の実現にあたり、不安材料は怪我人の多さ。中でも、あごを骨折し手術を受けたSOロマン・ンタマックと、左膝損傷のCTBヴィリミ・ヴァカタワの不在は、大きな損失だ。ワールドラグビーの2019年ブレイクスルー・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀新人賞)に輝いた才能の塊ンタマックと、豊富なセブンズ経験を15人制に活かす“Xファクター”ヴァカタワは、現在のフランス代表の絶対的な主軸である。他、HOカミーユ・シャ、PRデンバ・バンバ、FLフランソワ・クロ、SHバティストゥ・クイユー、SO/FBトマ・ラモスなどが怪我人リストに名を連ね、LOトマ・ラヴォーは新型コロナウイルス陽性となり選から漏れた。

 だが、ファビアン・ガルティエ監督は、「多くの変更を余儀なくされるのは、初めてのことではない」と語り、この状況を意に介していない。2020年秋の6試合(フィジー戦がなくなり結果5試合)に際し、クラブ側との協定により、1選手の出場が3試合までと制限され、23人ほぼ丸ごと入れ替えという事態を経験している。それに比べれば、「さほどのことではない」との認識である。

泰然自若、ファビアン・ガルティエ監督。現役時代は代表SH、いぶし銀の仕事人として活躍した(Photo/Getty Images)

ンタマック不在も要注意

 就任以来、メンバーをある程度固定してきたガルティエ監督。その一方で、「ポジションは練習で勝ち取るもの」と公言していたが、今大会、選手間競争に対するその評価に、関心が寄せられている。

 とりわけ注目は、背番号6、10、15を誰に託すのか。

 FW第3列は、8番グレゴリー・アルドリット、7番シャルル・オリヴォン、6番フランソワ・クロの3人がレギュラーと目されてきた。アルドリットは、膝の怪我による欠場が懸念されたが、関節鏡による処置により回復。1月22日には、フランス選手権TOP14(トップ・キャトルズ)のバイヨンヌ戦に出場したばかりか、2トライを挙げる活躍で復活をアピールしている。7番は、再びキャプテンに任命されたオリヴォンでほぼ確定。つまり、問題は6番。この位置を占めてきたクロは、昨秋に負った右足の怪我の回復が思わしくなく、1月23日にTOP14で復帰するも、再び痛みを訴え、戦線離脱。躍動感あるカムロン・ウォキ、トライの嗅覚に優れるディラン・クルタン、3列すべてのポジションをこなすフランス代表1111人目のキャップ獲得者アントニー・ジュロン(ガルティエ監督その他、人によってはジュロンシュと発音)らが、クロ不在の位置を争う。

 ンタマックの欠場に胸をなでおろす対戦チームがあるかもしれないが、10番の座を争うのは、所属クラブで好調の2人だ。1月2日のTOP14トゥーロン戦で1トライを含む21得点を記録し、ディフェンス固く、キックはンタマックより上という評価もあるマチュー・ジャリベールと、フランスのラグビー専門新聞『ミディ・オランピック』のファン投票による2018-19最優秀SOに選出された、正確なGKを武器に持つルイ・カルボネル。なお、カルボネルは、ガルティエ監督がトゥーロンを率いていた2017年にプロデビューを果たした選手である。いずれにせよ、ンタマックの不在を、フランスの穴と見るのは早計だろう。

欧州スターの不在を埋めるか。司令塔候補のルイ・カルボネル(Photo/Getty Images)

 15番の競争は、いささか趣を異にする。焦点は、ガルティエが監督就任後に抜擢しレギュラーに据えたアントニー・ブティエを、引き続き優先起用するのか否か。昨年のシックス・ネーションズのイングランド戦で90㍍のロングキックを披露するなど、一躍注目を集めたブティエだが、昨秋の代表戦ではディフェンス、特にハイボールに難を示している。また、今シーズン、所属のモンペリエでは、FBでの出場が序盤9月の2試合のみで、その後はSOが定位置。加えて、クラブは3連敗を喫するなど不調。これに対し、オータム・ネーションズカップで3年ぶりの代表復帰を果たしたブリス・デュランは、左足の長いキック、キック処理の良さ、捕まっても倒れない強さを見せるなど、同大会で最優秀選手に選出された。年明け早々に鼻骨骨折するも好調のデュランか、再上昇を期すブティエか。トマ・ラモスの欠場もあり、FBは二者択一での選出となる。

 競争が熾烈となるポジションがある一方、不動の地位を占める選手も数多い。例えばLO陣を形成する、ベルナール・ルルーとポール・ヴィレムセ。だが、他チームが特に警戒するのは、SHアントワーヌ・デュポンとWTBダミアン・プノーだろう。

 すでに世界一のSHとする評価もあるデュポンだが、その成長は止まるところを知らない。27キャップ7トライという数字が物語るように、自らチャンスを作り、自ら仕留める攻撃的なランを見せるが、今季のTOP14でも1月末までに10試合出場ですでに5トライ。欧州チャンピオンズカップ第1節アルスター戦でも、計5人を振り切り45㍍を走り切る圧巻のトライを記録。その嗅覚と攻撃的ランは、凄みを増している。

 もう1人、フランスの絶対的な武器となるのが、“TOP14最速の男”ダミアン・プノー。昨年はシックス・ネーションズのスコットランド戦1試合のみの出場に終わったが、足首の怪我から復帰、代表での再起に期待がかかる。怪我で代表を離れるヴィリミ・ヴァカタワの穴は、12番と13番両方でプレー可能、21歳にして所属のモンペリエのキャプテンを務めるアルチュール・ヴァンサンが埋めるものと思われるが、プノーのCTB起用もあり得る。

  昨年、評価が急上昇したフランスだが、参加2大会ともに優勝を逃している。この事実に関し、ガルティエは以下のコメントを発している。

フラストレーションとは、気に入らない、一時的な感情だが、それを振り払うことを学ばなければならない。我々のチームが、正にそれだ。我々は、進化し続け、どうすれば改善できるのかをより良く理解するため、これまでの道のりから、2020年から、学ぶことを決意した。同様に、今手にしているものを仕上げていく。大いに改善の余地があり、沢山のことを改善することができる。 

 CTBガエル・フィクーを例外とし、若くキャップ数の少ない選手たちで固められた、ガルティエ体制2シーズン目のレ・ブルー。成熟の速度をさらに上げるか、注目である。



◆◆◆WOWOW番組情報◆◆◆

★『ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ』
2/6(土)開幕!全15試合独占生配信&放送!

【第1節】
イタリアvsフランス 2/6(土)夜11:00
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イングランドvsスコットランド 2/6(日)深夜1:30
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ウェールズvsアイルランド 2/7(日)夜11:45
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★『エディー・ジョーンズが選ぶ!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ 名勝負選』、『グレイグ・レイドローが選ぶ!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ 名勝負選』はWOWOWオンデマンドで配信中!

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