大注目のボーデン・バレットがサントリー入団会見。気持ちはすでに開幕戦、優勝へ本気モード。

　会場に響き渡るシャッター音。気さくにポーズをとるスーパースター。
　久しくラグビー界に消えていた風景が戻ってきた。スポットライトを浴びているのはサントリーサンゴリアスの10番だ。
　1月6日、都内のホテルでニュージーランド代表SO/FBボーデン・バレットのサントリーサンゴリアス入団会見が開かれた。

■マスコット「サンゴリアス君」のぬいぐるみを手に笑顔のボーデン・バレット

「今日はジョージ・グレーガン、ジョージ・スミスの（会見の）2倍は人が集まってくれています」。冒頭、土田雅人シニアディレクター（SD）がそう挨拶した。

　前列に陣取ったスチールカメラマンは20人弱。テレビカメラも並び、ホテルの大きな宴会場の机が、ソーシャルディスタンスとは言え、ほぼ記者で埋まった。ニュージーランド代表キャップ88、ワールドラグビーの選ぶ世界最優秀選手に2016、17年の2回選出の経歴もさることながら、一昨年の日本開催ワールドカップでのインパクトが大きいのだろう。

　土田SDは言葉を継ぐ。
「先日、東芝、パナソニックとのプレシーズンマッチを観ました。東芝戦では後半20分に出場して、すぐトライ。パナ戦はテストマッチのような試合の中、ジャッカル、ターンオーバーを見せてくれた。サンゴリアスに加入してくれて本当に嬉しい」
　自身、日本代表キャップを持ち、代表チーム強化にも携わったSDが自ら、世界屈指のSOの真価を確認した。

　バレットが、加入の理由を説明する。
「16～17か月前、NZ協会と4年契約を結んだ際、サバティカルとして他国でプレーする条件を得られました。フランスも候補にあがりましたが、日本や東京の印象が良かったので、サントリーに決めました」

　12月初旬に来日、2週間の自主隔離を経てチームに合流。冒頭のようにすでにプレシーズンマッチに2試合出場。チームメートとのコミュニケーションを日々築きつつある。

「キャプテン（中村亮土）のフィジカリティには驚きました。サイトー（SH齋藤直人）、ショーゴ（WTB/CTB中野将伍）はポテンシャルがある」

　サントリーはミルトン・ヘイグ監督、中村主将のもと、アタッキングラグビーを志向する。そのスタイルが自らに合うとも。一方でプレシーズンマッチを経て、勝つためのスタイルも組み立てられているようだ。

「パナ戦では相手のディフェンスラインにスピードがあった。シーズンが始まればキックも使わなくてはいけなくなるでしょう」
「3人の日本人SH（流大、大越元気、齋藤）とはいいコミュニケーションがとれていますが、ミッドフィールダー、アウトサイドの選手のコールも私のディシジョンメーキングに必要。現状は言葉の壁がある。いかにプレッシャーのかかった状態で、いいコミュニケーションがとれるか」

　言葉の端々から、すでに気持ちが開幕戦（16日・対トヨタ自動車）に向かっていることが伝わってきた。トップリーグで対戦したいチームは神戸製鋼、パナソニック。対戦したい選手としてブロディ・レタリック、ベン・スミス（ともに神戸製鋼）、TJ・ペレナラ（NTTドコモ）の名前が挙がった。

　現状では契約はサバティカルのため1シーズン。「その先のことは考えていない」としながらも、「いずれまた戻ってきたい気持ちは持っています」と含みを持たせた。

　2003年度にスタートしたトップリーグの最後となるシーズン。サントリーの優勝回数は東芝と並ぶ最多タイの5回だ。それを「6」に書き換えて有終の美を飾るためのXファクターがバレットかもしれない。