ワールドカップ 2020.09.29

「静岡の衝撃」を振り返る当事者の声。対戦国の司令塔は日本でのプレーに興味?

[ 向 風見也 ]
「静岡の衝撃」を振り返る当事者の声。対戦国の司令塔は日本でのプレーに興味?
上段左から山田章仁、ジャック・カーティー。下は坂手淳史


 その一戦は、静岡の衝撃と呼ばれた。

 2019年9月28日、小笠山総合運動公園エコパスタジアム。
 
 ラグビーワールドカップ日本大会のプールAの試合で、ホームの日本代表が開幕前に世界ランク1位にもなったアイルランド代表を19-12で破った。ボール保持率を高める戦法と大型ランナーへの鋭いタックルがはまった。

「静岡県は日本の遠征地で最も気に入った場所のひとつです。…試合結果以外は!」

 ジョーク交じりに後述するのはジャック・カーティー。アイルランド代表の登録メンバーで、この日はかねて主力だったジョナサン・セクストンのけがに伴い、SOとして先発していた。

「日本代表の速いパス回しの展開に自分たちのフィジカルを活かしきれなかった。それが苦しい試合展開になった一番大きな要因になったと思います」

 敗戦からちょうど丸1年が経った2020年9月28日、三菱地所が動かす「丸の内15丁目PROJECT.」のオンライントークイベント『ONE TEAM FES @ ONLINE0928』へ登壇した。この大会で初の8強入りを果たした日本代表からは、坂手淳史が参加。画面上で対談した。 
 坂手はスクラム最前列中央のHOとして終始、ベンチで待機した。前半こそ2トライを許すなどして9-12とリードされたのを「最初の10分間で押されたらだめ、前に出よう、そう思って試合に臨んだのですが、それでも押される場面があった」とし、スリル満点の80分間をこう振り返った。

「どうしても(点差を)離されるとしんどいとは考えていたので、クロスゲームを勝っていくという意識を持っていました」

 イベントでは元日本代表の山田章仁がMCを務め、ファンから直接、質問を募りながら進めた。シャープな投げかけが続くなか、山田は「新聞の人が喜ぶ質問が多いですね。カジュアルな感じでもいいですよ」と笑う。

 坂手は、2023年のフランス大会に向けた日本代表のすべきことについて話した。日本大会で出番のなかった選手が5名(決勝トーナメントに進んだチーム中最多)いたこともあってか、「選手層の厚みが課題とも言われるが…」といった旨で聞かれていた。いち選手としての決意は…。

「もちろんフランス大会は目指したいと思っていますし、そこに向けてトレーニングに励んでいます。その(日本代表の課題に関する)質問が来た時に何て答えようと思って、層の厚さと答えようと思っていたら、(質問のなかで)そう仰られていた。僕も、そこが課題かと思います。僕はこの大会ではほとんど(5試合中4試合)リザーブだったのですけど、そこでもっとゲームをチェンジさせる働きがしたかった。ちょっと、悔しさの残る大会でもありました。個人のレベルを上げて、また日本代表が集まった時にそれを発揮したいと思います」

 カーティーは、大会前のチームの選手選考について「大会に参加できるかを5日前までわからなかった選手もいました。なぜなら、選考がどうなるのか直前までわからなかったので。自分も不安な部分はありました」とも話した。「大会に行けると決まった時は嬉しかった」と続け、大会期間中の日本のおもてなしに感謝した。

 静岡のゲームを現地観戦した日本のファンが、近くに座るアイルランド出身のファンに「おめでとう」と喜ばれたという逸話を聞けば、こうも語っていた。

「アイルランドのファンの皆さんは試合を観るためにたくさん貯金をしていて、旅の計画を立てていた。(旅行中は)日本文化全体を楽しむ意図もあったと思います。日本の皆さんがホスピタリティを持って接してくれていたのもあって、皆、試合の後でも路上で踊るなど、楽しめたのではないでしょうか。(いい交流があったのは)日本の皆さんの素晴らしいおもてなしがあったからです」

 親族が加工肉業を営むカーティーは、日本の焼き肉にも舌鼓を打ったそう。現在は母国のコナートでプレーするが、将来的な日本行きにも興味を示す。

 普段NTTコムでプレーする山田が「坂ちゃん、その時は(対戦相手として)得意の突き刺さるタックルを!」と突っ込めば、パナソニック所属の坂手は「同じチームかもしれないですけどね」とほほ笑んだ。

 『ONE TEAM FES @ ONLINE』は、ワールドカップ日本大会の日本代表対サモア代表戦から1年後の2020年10月5日にも開かれる。サモア代表主将だったジャック・ラム、日本代表の右PRのヴァル アサエリ愛が参加予定だ。

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