サクラセブンズ、中村知春。「東京でリオの男子を超えたい」
リオデジャネイロ五輪(2016年)に出場した女子セブンズ日本代表で、2021年に延期、開催予定の東京五輪への出場を目指す中村知春がオンライン会見に臨み、報道陣の質問に答えた。
女子セブンズ日本代表候補は、現在、熊谷で合宿の最中だ(9月7日〜13日)。
コロナ禍の影響を受けて思うように活動ができない期間もあったが、8月に入ってからは、候補選手たちをいくつかのグループに分け、少ない人数での合宿を重ねてきた。
今合宿が複数回目の参加選手もいるが、中村はコロナ禍になってから初めての参加。コンディション不良の時期もあったからだ。
「合宿での練習の強度に耐えられるようにしてから参加しようと考えていました。いま、ラグビー仕様の体に戻しているところです」
久しぶりに仲間と顔を合わせ、ボールを回す。以前は当たり前だった、そんなことでも嬉しい。
「(ラグビーができる)喜びをあらためて感じています」と笑顔を見せた。
緊急事態宣言中も制約の多い中で工夫を凝らし、トレーニングを積んできた。
所属チームを(アルカス熊谷から)ナナイロ プリズム福岡(同チームでGMを務める)へ移したため、熊谷、久留米とふたつの拠点を持つ。そんな背景から熊谷の地で、同じナナイロ所属の代表候補、横尾千里らと練習に取り組んだ。
「公園や川原、坂道もあちこちにあります。車をスクラムマシンのように押したりもしました」
代表候補のオンラインミーティングも有効に使った。週に5回ほどおこなったこともあり、「これまで気付かなかった、それぞれの選手たちの気持ちも知ることができた」と収穫を口にする。
オフ・ザ・フィールドで太くした絆を、ピッチに出た時の強みにしたいと考えている。
豊富な運動量で攻守に活躍。反応の速さや、相手防御にクサビを打つプレーで好機を作るなど、世界レベルの近くにいる中村も32歳になった。
五輪の1年延期を受け、男子代表候補からは代表引退の道を選択するベテラン選手たちもいる。その心情を理解できる立場として、それぞれの決断は他人事ではなかった。
自分自身も、(延期について)いろいろ考えた。ゴールまでの距離が延びたことはキツイ。でも、あと1年高められる時間を得たのも事実。心が揺れるも、原点を見つめ直したら、「女子ラグビーの価値を高めたいと思ってやってきたのだから、それをやり切りたい」と吹っ切れた。
リオ五輪は金メダルを獲りたいと公言して大会に臨み、10位に終わった。当時を振り返り、「個々が世界と戦うレベルに達していないと分かっているのに、そこはチームで補おうとしていました。弱い部分としっかり向き合えていなかった」と話す。
同じあやまちは繰り返さない。
来年に向け、「まずは自分が世界レベルにならないといけないし、一人ひとりがそのレベルにならないと(メダルはとれない)。世界と戦えるポテンシャルを持つ選手たちも増えているので、世界一のフィットネスを…というだけでなく、戦略を明確にしたり、アタックの時間を増やすことなどをやっていきたい」と考える。
現状世界3位のチームなら話は別だが、自分たちは10位だ。「あと1年あることは100%ポジティブに考えるべき」と前を向く。
当初は、この夏におこなわれるはずだった東京での祭典ですべてを出し切るつもりだった。その後、ワールドラグビー・セブンズシリーズへ。
「これまで突っ走ってばかりだったので、最高のシリーズを楽しみ、両親やお世話になった方たちを招待したいな、と思ったりもしていました」と、華やかな舞台を楽しみ、最前線での競技生活を終えたいと考えていた。
しかし状況は変わり、いまだ戦いの真っ只中。思っていたような日々は先送りにして、アスリートとしての階段を昇り続ける。
「男子はリオで4位、私たちは10位でした。東京では男子の残した成績を超えられたらいいですね。それがいま、モチベーションになっています」
リオで男子代表の先頭に立った桑水流裕策主将は、ナナイロプリズム福岡のヘッドコーチ。「勝手に背中を追い続けている人」を追い越したい。