ラグビー界レジェンドの大野均、日本代表で一緒だった山田章仁と語った軌跡。
日本代表として最多の98キャップを保持し、今年5月に引退を発表した東芝の大野均が6月17日、NTTコム所属の山田章仁がおこなうオンラインイベントに登壇。日本代表でともにプレーした山田と語らうなか、42歳まで戦い続けた歴史を振り返った。
「一番はラグビーをプレーするのが好きだった。所属してきたチームのすべてが魅力的だった。このチームで勝ちたい。それが一番の原動力だったなと」
山田はかねて松島幸太朗、五郎丸歩と日本代表でともにプレーした仲間をゲストにオンライントークイベントを実施。大野を招いたこの日もファンから直接の質問を募り、ファンへの感謝を口にする。
試合会場で観客にサインを書き続けるわけについて、大野、山田はこのように話した。
「僕たちは毎週のように試合をしていますけど、スタジアムへ観に来る人のなかにはその試合が初めてだったり、なかなか来られなかったりする人もいるかもしれない。そういう方々には少しでもいい思いをして帰ってもらいたいですし、あと、サインを求めてもらえるのはありがたいよね、アキ」
「もちろんです。これは『あるある』なんですけど、サインを書きたい選手も、(ファンに)呼んでもらえないと書けないですから」
2人は2015年、ワールドカップ・イングランド大会へ出場。過去優勝2回の相手を下した南アフリカ代表戦、日本代表史上初の1大会2勝目を挙げたサモア代表戦ではともに先発した。WTBの山田とLOの大野は、「お互いをどう思っているか」という話題をこうまとめた。
「僕が均さんのことをどう思っているかですか? それもめちゃくちゃ簡単。全部に全力です。真似したいけど真似できない、遠い存在ですね」
「アキは本当に初めてジャパンに入った頃から変わらずチームを明るくさせてくれる存在で、味方にしたら頼もしい。ただ、東芝とパナソニック(山田の前所属先)で何回も試合をしましたが、アキはビッグゲームになるほど活躍する」
「均さんがリザーブで(試合途中に)入ってくる時の会場の盛り上がり。あれに対戦相手はダメージを食らいます。あの時は、『お! 皆、観てくれてる』という感じなんですか」
「長くやってよかったと思うよね。こんなおっさんに声援を送ってくれて、本当に嬉しいなって」
大野が最多キャップ記録を更新する2014年春のツアー時は、試合会場へ向かうバスで山田が大野の隣の席を率先してキープ。大記録を樹立する戦士が醸す空気に間近で触れ、「(偉業達成時も)いつもの均さん」だったのだと実体験をもとに振り返ったこともある。
今回のイベントでも、日本代表時代を回顧。大野は元ニュージーランド代表のブラッド・ソーン、元南アフリカ代表のヴィクター・マットフィールドら世界的な名LOに刺激を受けてきたとし、2011年のワールドカップ・ニュージーランド大会前に遠征したイタリアへいつかプライベートで行ってみたいとも語った。
出会った好人物について語る場面では、そのニュージーランド大会でぶつかった同国代表メンバーで東芝所属のリチャード・カフイへの印象を述べる。
「プレーはもちろん凄いのですけど、オフ・ザ・フィールドでもチームメイトを気遣ってくれるし、率先して雑用もやってくれる。元オールブラックス(ニュージーランド代表)がやってくれるんなら俺らもやらないと…という気持ちにもなる。世界で一番いい男なんじゃないかと思います」
引退後、東芝の普及担当のひとりとなった大野。現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動が制限されるが、「ラグビー自体のすばらしさも広められるような活動ができればと思っています。(コロナ禍が)明けたらまた皆さんの前に出たい」。昨年限りで引退した元日本代表LOのトンプソン ルークとは、いつか引退試合ができたらいいね、と、言い合っているようだ。