最後は13人になるも、イングランドがホームでウエールズ破り3勝目
8万1522人のファンで埋まったトゥイッケナムにウエールズを迎えたイングランドが、33-30でウエールズを下した。イングランドは昨年の大会、敵地・プリンシパリティスタジアムで負けた借りを返した。アイルランド、スコットランド、ウエールズを下したイングランドは、トリプルクラウンのトロフィーを勝ち取った。
先制は3分。ウエールズ陣でのイングランドボールのラインアウトだった。
ボールをキープしたイングランドは、ブラインドサイドから走り込み、パスを受けたWTBアンソニー・ワトソンが弾丸のようだった。狭いスペースを駆け抜けてトライ。CTBオーウェン・ファレルのゴールも決まり、7−0とリードを奪った。
伝統の一戦。ときに激しい掴み合いもあった。
イングランドPRジョー・マーラーがどさくさに紛れ、ウエールズのキャプテン、LOアラン=ウィン・ジョーンズ主将の急所を掴む。
荒れ玉が飛び交う、激しい試合展開だった。
ウエールズのFB、リー・ハーフペニーとイングランドのファレルがPGを決め合い、スコアは10-6と、白いジャージーのリードは4点となった。
前半35分、イングランドはウエールズゴール前のラインアウトからフェーズを重ね、最後はFBエリオット・デイリーが左隅にトライ。ゴールも決め17-6と差を広げた。
その後、ファレルとハープペニーがそれぞれPGを追加する。20-9で前半を終えた。
後半は、ウエールズの目の覚めるようなプレーで始まった。
イングランドの蹴った後半開始のキックオフボールを受けたレッドドラゴンは自陣深くから攻めた。巧みにスペースを突いて走り、巧みにパスを回す。いっきに攻め込み、最後はFLジャスティン・テュプリックがインゴールに入った。ゴールも決まり、両軍の得点差はふたたび4点となった(20-16とイングランドのリード)。
トライを奪われたイングランドは、すぐに奮起した。
後半4分にファレルのPGで23-16とすると、10分にはウエールズ陣22メートルライン上のスクラムを押し込んだ。マーラーの強烈なプッシュを見せた瞬間だった。
その見た目と素行で何かと話題を呼ぶマーラーだが、やるときはやる。PG機を得る主君だった。ここはSOジョージ・フォードがキッチリと決める。スコアは26-16となった。
後半20分には肉弾戦を繰り返してウエールズ陣に深く攻め込んだ。最後はCTBマヌ・トゥイランギがトライ。ファレルのゴールキックも決まり、33-16とした。
勝利を大きく引き寄せるトライを奪ったそのトゥイランギは、後半33分過ぎに退場となった。肩がウエールズのWTBジョージ・ノースの頭部に衝撃を与えたからだ。自陣ゴール前で体を張った際、タックルが不運な角度で入ってしまった(直前にPRエリス・ゲンジも退場となっていたためイングランドは13人に)。
トゥイランギは、グラウンドを去る前にノースの肩を叩き、申し訳なさそうな顔をした。それを笑顔で受けたノース。激しい闘いの中でも、スポーツマンシップを忘れることはなかった。
ウエールズは試合終了前にSOダン・ビガー、FLテュプリックがトライを奪い、ゴールキックも決めて3点差(33-30)に迫るも、時すでに遅し。ジョーンズ主将は、「最後に自分たちが何者であるかを見せることができた。ただ、エンジンがかかるのが遅すぎた」と立ち上がりの悪さを振り返った。
この日が99キャップ目となり、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたイングランドのSHベン・ヤングスは、「すべてのテストマッチに誇りを持って戦っている。そんな戦いを99回も経験できたことに感謝している」と胸を張った。
エディー・ジョーンズ監督は「最後に勝ったのは我々です。マヌ(トゥイラギ)のタックルとレッドカードについては、よく分かりません」と話した。途中からFBに入ったヘンリー・スレイドから足首へのタックルを受けたノースが倒れかかったところに、たまたまトゥイランギの肩が当たったシーンへのジャッジに納得できないようだった。
ウエーズルのウェイン・ピバック監督は、「今日は負けてしまいましたが、最後まで諦めずに戦いました」と潔く負けを認めた。
新型コロナウィルスの影響で、次節のローマでのイタリア戦の延期が決まったイングランドは、これで3勝1敗に。昨年は全勝優勝だったウエールズは3連敗で、1勝3敗と奮わない。
今季ここまで唯一の全勝チームであるフランスは、3月8日(日)に敵地・マレーフィールドでスコットランドと対戦する。