海外 2020.03.07

ツアー長期化のサンウルブズ。布巻は、地上戦と仲間の心情を「ケア」する。

[ 向 風見也 ]
ツアー長期化のサンウルブズ。布巻は、地上戦と仲間の心情を「ケア」する。
ノーサイド。試合後、ブランビーズに拍手を送る布巻峻介(中央)らサンウルブズ(Photo: Getty Images)


 サンウルブズのFLとして先発の布巻峻介は試合開始早々、自陣で同じFLのジャスティン・ダウニーとジャッカルを仕掛ける。

 接点で相手の持つボールに絡み、そのまま攻守逆転を決めたり、攻撃のテンポを鈍らせたりするプレーだ。

 ここでは対するブランビーズから、ノット・リリース・ザ・ボール(倒れたランナーが球を手放さない反則)を誘った。

 布巻はこの他の場面でも、接点に身体をねじ込んだ。防御の安定性を保ったように映った。

 しかし、本人の実感は違った。

「試合を通してチャンスはあったように見えたんですけど、相手は基本がしっかりしていてボールが遠く、絡みそうで絡めなかったシーンがあった」

 相手のサポートが薄い接点などボールへ絡めそうな「チャンス」に反応も、対するランナーは味方が攻撃を継続しやすいよう「基本」を意識していたようだ。確かに、ランナーがボールを地面に置く際に自陣側へ腕を伸ばしていれば、布巻が「ボールが遠く」感じたのも頷ける。

 3月6日、オーストラリアはウーロンゴンのWINスタジアム。サンウルブズはこの試合を14-47で落としていた。布巻はチームの組織防御に改善があったとしながら、自らの長所であるジャッカルには厳しい評価を下していた。

「(ジャッカルを決める)チャンスと思ったところ、自分がいい姿勢を作れなかったりして、自分でチャンスを手放したところもある。あそこで獲りきれるようにならないと」

 東福岡高を経て入った早大でCTBからFLに転向し、パナソニック入部2年目の2016年に日本代表デビューを果たした。

 昨年はワールドカップ日本大会の大会登録メンバー争いに最後まで絡み、今季はスーパーラグビーと国内トップリーグの日程が重なるなかサンウルブズ入りを表明。日本のチームが国際リーグに挑む価値を再提示しながら、選手としてさらに成長するためだ。

 このブランビーズ戦は、当初8日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で開催予定だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、日時と会場が変更となった。

 3月14日のクルセイダーズとの第7節も、東京の秩父宮ラグビー場からブリスベンのサンコープスタジアムに開催場所が変わっている。もともと2月中旬から約2週間の予定だったサンウルブズの海外遠征は、かねて組まれていたオーストラリアツアーを含め最短で3月下旬まで延びることとなった。

 しかし、布巻はこうだ。

「いまは、皆が思っているほど(問題はない)」

 日本のファンを思って「ホームゲームがなくなったのは単純に寂しいです」としながら、「だからと言って何かが(チームに)影響したかというのは正直、ない」。遠征の長期化に伴う不具合が訪れるのは「これから」だと読み、自身は今季新加入の日本人選手を「ケア」する立場に回りたいという。

 2017、18年にもサンウルブズでプレー経験がある身長178センチ、体重98キロの27歳は、こう続けた。

「直弥さん(大久保直弥ヘッドコーチ)からも、もともと(スーパーラグビーは)タフだぞと言われていて、僕もある程度はわかっていました。(どのようにタフかの)中身が変わっただけで『それ(グラウンド外での状況がタフであること)を含めてスーパーラグビー』というのは変わらない。(スーパーラグビーが)初めての人も多いので、士気を落とさないようにやりたいです」

 今回のツアーには、早大から参加の齋藤直人、中野将伍らスーパーラグビー初参戦の日本人選手も多い。そんななか布巻は、異国の楽しみ方を共有するなどして皆が心地よく試合と練習に臨めるようにしたいのだ。それと同時並行で、鋭いジャッカルを繰り出す。

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