【ラグリパWest】友情の「KINTETSU」
胸には友情を示す「KINTETSU」の文字。ジャージーの一番目立つ場所に掲出された。
2月1日、スーパーラグビーの開幕週。オーストラリアのレベルズは協力関係にある近鉄の名を抱き、サンウルブズと戦った。
近鉄の現場トップ、ゼネラルマネジャー(GM)の飯泉景弘はその一戦を現地の福岡・レベルファイブスタジアムで見る。
「うれしかったし、ありがたかったですね。開幕ゲームは日本のラグビーファンみんなが見てくれる。インパクトは大きかったですよ」
近鉄は1月に閉幕したトップチャレンジを7戦全勝で制した。トップリーグ復帰を目指すチームにとっては大きなPRになる。
飯泉と補佐役のチームディレクター・吉村太一はレベルズから賓客の扱いを受けた。
「練習から見せてもらいました。試合の日はチームバスで移動。IDカードも準備してくれ、ロッカールームの出入りも自由。試合直前のミーティングにも参加しました。試合を見るのに、ヘッドコーチ(監督)や分析担当者が座るブースに招かれましたが、さすがにそれはお断りしました」
飯泉たちには驚きの連続。極めつけは今回の広告宣伝費。なんと無料。ジャージーは国外での試合用に着用すると聞いた。
両チームの間にパートナーシップ契約が結ばれたのは、昨年9月13日だった。
「エージェントが入らない直接交渉だったので、提携料金はかなり安いはずです」
飯泉は言う。太平洋をはさんだ距離を近づけたのは選手やコーチだった。
近鉄に昨秋加わったSHウィル・ゲニアとSOクウェイド・クーパーはそれまでレベルズに所属していた。オーストラリア代表キャップを110と70持つHB団である。
加えて、近鉄FWコーチのニック・スタイルズとレベルズヘッドコーチのデイヴィッド・ヴェッセルズは2013年、フォース(2017年限りでスーパーラグビーから外れる)でFWコーチと上級アシスタントコーチとして同僚だった。
協力関係の骨子は、コーチ、選手の研修のための送り込みや南半球における最新の情報共有、さらにはレベルズのコーチングを日本で定期的に受けられる点などである。
コーチ研修は、2月10日から2週間の日程で行われている最中だ。
ヘッドコーチの有水剛志、アシスタントコーチの佐藤幹夫と重光泰昌らが渡豪済み。
2月18日からは主務の徳丸孝太と副務の村下雅章が1週間、チーム運営を学ぶ。
3月15日からは若手の社員選手が3か月の短期留学をする。PR石井智亮(3年目)、FL菅原貴人、WTB?野蓮(ともに2年目)のレギュラークラス3人。全員、総合職採用で、鉄道などを有する近鉄グループホールディングスで社長になれる資格を有する。
チーム全体の受益となるコーチングは、ヴェッセルズ自らが来日。これまで計3週間ほどトレーニングを監修している。分析担当者は1か月ほど滞在した。
この提携の今年の目玉は練習試合だ。8月、メルボルンで開催。25人ほどの選抜チームで対戦する。春のモチベーションになる。
「レベルズはよくやってくれるし、ウチのことを考えてくれています。こちらからのお願いが断られることはまずありません」
飯泉の言葉には感謝がこもる。