日本代表 2019.08.29

ラグビーワールドカップに挑む日本代表 全31人選手名鑑 その2 【LO・FL・NO8編】

9月20日に開幕するラグビーワールドカップ2019日本大会に向け、ついに日本代表31選手が発表された。「一生に一度」と謳われる地元開催のW杯で、前人未到のベスト8以上を狙うジャパン。その命運を託された31人のツワモノ達とは一体、どんな選手なのか。続いて、同じくFWのポジションから、ロック(LO)、フランカー(FL)、ナンバー8(NO8)の10人を紹介する。 ※ラグビーマガジン編集『ラグビー日本代表応援ブック』より抜粋・改変

ラグビーワールドカップに挑む日本代表 全31人選手名鑑 その2 【LO・FL・NO8編】

トンプソン ルーク (LO)
「オールアウトのリアルLO」

生年月日:1981年4月16日生まれ 
年齢:38歳
出身地:ニュージーランド出身(日本国籍)
身長/体重:196㎝/110㎏
現所属クラブ:近鉄ライナーズ

 多くのファンが、この人の代表復帰を待ち望んでいた。いつだってオールアウトのリアルLO。献身という言葉がジャージーを着ているかのような鬼気迫るプレーぶりで、観戦者の琴線を激しくかき鳴らす。
 歴史的勝利となった2015年ワールドカップの南アフリカ戦、3点ビハインドで迎えた終了間際に敵陣ゴール前のペナルティでスクラムを選択した際、「歴史変えるの、誰!」と檄を飛ばしたのは、あまりにも有名なエピソードだ。同大会後は代表引退を表明し、LOにケガ人が続出し急遽追加招集された2017年6月のアイルランド戦を除いてジャパンから離れていたが、サンウルブズの今季開幕戦で37歳306日の史上最年長記録となるスーパーラグビーデビューを飾るや、たちまち欠かせぬ主軸に。試合を重ねるごとにパフォーマンスを上げ、6月の代表スコッド入りを勝ち取った。
 実は、昨季限りで現役を引退することも頭にあった。しかし最愛の妻が背中を押してくれたことで、ふたたび心に火がついた。2017年アイルランド戦では「僕はおじいちゃんだから」と笑っていた男は、今、「僕はまだ若い。年齢はただの数字。心がいちばん大事」と真剣な表情で言いきる。
 キャップ数64は現在のFW陣で最多。もし今秋の日本大会のピッチに立てば、4大会連続のワールドカップ出場となる。経験が大きな意味を持つと言われるビッグイベントで、これほど頼もしい人間はいない。

ヴィンピー・ファンデルヴァルト (LO)
「破壊力満点のピック&ゴー」

生年月日:1989年1月6日生まれ
年齢:30歳
出身地:南アフリカ出身
身長/体重:188㎝/106㎏
現所属クラブ:NTTドコモレッドハリケーンズ

 南アフリカ出身者らしくフィジカルバトルを得意とする頑健なLO。188cmの上背は母国のFWとしては小柄な部類だったため活躍の場が限られていたが、2013年にNTTドコモへ移籍し、日本ラグビーの中でもまれてテストマッチプレーヤーへと成長を遂げた。
 レッグドライブの推進力が持ち味で、力強く近場をこじ開けるピック&ゴーは破壊力満点。LO、FLのどちらもこなす万能性も、チームにとって貴重なオプションとなる。日本代表での初戦となった’17年秋の世界選抜戦でチャンスをつかみ、続くオーストラリア戦での献身的な働きぶりからジャパンに定着。来日した時からの夢だったワールドカップに向け、腕をぶす。

ヘル ウヴェ (LO)
「相手をなぎ倒す大型クレーン」

年月日:1990年7月12日生まれ
年齢:28歳
出身地:トンガ出身(日本国籍)
身長/体重:193㎝/113㎏
現所属クラブ:ヤマハ発動機ジュビロ

 拓殖大時代から図抜けた突破力で知られる存在だったヘル ウヴェの名が一躍全国区となったのは、2017年6月のルーマニア、アイルランドとのテストシリーズ。全3戦に背番号5を着けて先発し、相手をなぎ倒すような猛烈なボールキャリーを連発してたびたびスタンドをどよめかせた。同年より加入したサンウルブズでも南アフリカやニュージーランド勢に対しフィジカルで互角以上に渡り合えることを証明し、膠着局面を打開できる突破役として日本代表での地位を確立した。
 ヤマハ発動機では師匠と慕う元NZ代表のモセ・トゥイアリイの元で多くを学び、成長を遂げた。課題のフィットネスと規律面を克服し、レギュラー奪取を狙いたい。

ジェームス・ムーア (LO)
「骨惜しみしないハイタワー」

生年月日:1993年6月11日生まれ
年齢:26歳
出身地:オーストラリア出身
身長/体重:195㎝/102㎏
現所属クラブ:宗像サニックスブルース

 母国オーストラリアでは13人制のラグビーリーグで長くプレーし、21歳の時に15人制にコードスイッチ。2016年に23歳で東芝に加入し、2018年シーズンからサンウルブズ、宗像サニックスで実績を重ねてRWCTS入りを勝ち取った。
 195cmの身長は国際レベルのLOとしては小さな部類だが、骨惜しみしない意欲的なプレーぶりで首脳陣の信頼を受ける。26歳と若く、成長の余地を大きく残している点も魅力のひとつだ。ウルフパックでは全6戦中4戦に先発し、2試合はフル出場で持ち前のハードワーカーぶりを披露した。この6月には日本代表資格も無事クリア。すっきりとした状態で、ワールドカップメンバー入りを目指す。

リーチ マイケル (FL)
「世界を迎え撃つ最強のスキッパー」

生年月日:1988年10月7日生まれ 
年齢:30歳
出身地:ニュージーランド出身(日本国籍)
身長/体重:190㎝/110㎏
現所属クラブ:東芝ブレイブルーパス

 いまや日本代表の闘将にとどまらず、日本ラグビーの顔と言うべきプレーヤーになった。脚の付け根のケガで今春の試合は全休したが、6月3日の日本代表発表会見でジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が「110%安心して試合ができる状態になるまで彼を守る」と語ったことからも、いかに大きい存在であるかがわかる。
 父はスコットランド系ニュージーランド人で、母はフィジー出身。ニュージーランドのクライストチャーチで育ち、2004年、15歳の時に留学生として北海道の札幌山の手高校に入学した。当時のサイズは身長184cm、体重は80kgほど。童顔で細身だった少年は、日本のラグビーの土壌でみるみる才能を開花させ、世界的プレーヤーへと成長を遂げた。
 日本代表に初めて選出されたのは、東海大在学中の2008年。22歳で臨んだ2011年のラグビーワールドカップニュージーランド大会ではプールマッチ全4試合にフル出場を果たし、トンガ戦でマン・オブ・ザ・マッチを獲得するなど出色の活躍を見せた。2013年に日本国籍を取得し、2014年4月にはエディー・ジョーンズHC(当時)のもとでキャプテンに就任する。2015年9月19日のワールドカップの南アフリカ戦、3点ビハインドで迎えた終了直前に指揮官の指示に反してPGではなくスクラムを選択し、国際スポーツ史に燦然と輝く金星へと導いたことは、楕円球関係者なら誰もが知る語り草だ。
 2016年シーズンは長年のハードワークによる疲労から代表を離れたが、翌2017年6月より復帰し、同年秋にはキャプテンにもカムバックした。以降、敵地でフランスとドロー、イタリアとジョージアに快勝を収め、オールブラックスから5トライを奪い、聖地トゥイッケナムでイングランドを相手に前半をリードして終えるなど、ジャパンは着実に成果を残してきた。その中心には、攻守に獅子奮迅の働きでチームを牽引するリーチの姿が常にあった。
 昨冬の年末年始は家族とともに故郷のニュージーランドやフィジーで「これほど長い休みは人生で初めて」という休暇を過ごし、心身をリフレッシュ。今春の合宿では「ベスト8、4ではなく優勝を目指す」と上方修正した目標を口にし、ワールドカップに向けた決意と覚悟を示した。日本代表が前回大会を越える成績を残すためには、ワールドクラスの実力と精神力を備えたこのスキッパー(船長)の奮闘が欠かせない。万全の状態での帰還は、チームを大きく加速させるはずだ。

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