流経大ラグビー部はリーダーが20人もいる! 意図は?
流経大ラグビー部は今季、20名の選手をリーダーに据える。メンバーは部内投票で選ばれ、週に1~3回のペースでミーティングをおこなう。4年生で寮長の粥塚諒は言う。
「チームの方針を考えたり、リーダーのマインドを固めたり。コーチ陣に言われてミーティングをするのではなく、自分たちでプレゼンをします。ミーティングはウェイトトレーニング後に1時間くらい。ただ、最長で3時間以上かけたこともあります」
関東大学リーグ戦1部では過去3度の優勝を誇り、前年度までの3シーズンも2位、3位、3位と上位を争うも、大学選手権ではここまで4強入りを果たせずにいる。さらなるジャンプアップのために採り入れたのが、今度の仕組みだったのだろう。FLで20歳以下日本代表経験者の粥塚は続ける。
「日本一を目指す。そのために必要なことを『ワンチーム』としました。ワンチームになるために大事なことに『クオリティ』『マインドセット』を掲げました。このチームで過ごしていくなかで、寮生活の規律、ラグビーの規律の部分で…と見える部分があって。自分が4年生になったなか、私生活から変えていこうと思いました」
複数リーダー制は現在のディフェンディングチャンピオンの明大も採用するが、構成員の数は明大が主将、副将、寮長を含め9名なのに対して流経大は20名。大人数の幹部が並ぶ背景には、選手同士の絆が断たれるリスクを最小化したい思いも見え隠れする。
選手数約160名というクラブは例年、夏にはハイパフォーマンス、ドラゴンズ、バーシティと3つのチームに分かれる。大学日本一を目指すハイパフォーマンスが事実上の1軍にあたり、その他のチームはそれぞれ東日本トップクラブリーグのディビジョン1、ディビジョン2に加盟。全グレードの選手が公式戦へ出られる一方、各組に登録されてからはシーズン終了まで昇降格はない。
選手の話を総合すれば、今度の20名には主力格でない部員も含まれている。3年でSHのレギュラーを目指す仁林隼人は、「僕の言っていることが正解ではないかもしれません」「自分はリーダーではないのでわかりませんが」としつつ、このクラブにとっての複数リーダー制の意義をこう話す。
「3~5人のリーダーが決まったら、その人たちしか動かないこともあるかもしれない。ただ20人もリーダーになればいろんな意見が出し合えると思います。それと、1人が皆にものを伝えるのは大変ですが、いまは(部内で分かれた)各グループにリーダーがいるので話が(全体に)通りやすい」
確かに意思決定のプロセスにさまざまな立場の人間が関わることで、組織全体へ情報が伝わりやすくなりそう。粥塚は度重なるミーティングの成果を「個々が目標に対して…という気持ちになって、練習の態度が変わりました」と語る。
「つい練習の時、以前であれば1、2メートルで(走るのを)やめるところ、いまではきちんと(所定の)線まで走ることを意識しています。互いに声をかけ合ってもいます」
チームは校内合宿中の8月11日、東京・明大八幡山グラウンドで明大と練習試合を実施。2つおこなったうち主力同士による「A」では、要所でのミスに泣き20-61で敗れる。対する明大はハーフタイムに主力組を全員交代させながらも、攻守逆転後の組織的な攻めなどでトライを量産していた。
流経大は、春の練習時間を個々の能力開発に割いたとあって、内山達二監督も「ディフェンスでFWとBKのリンクアップが弱かったなど、練習でしていない部分が試合で出たのがラインブレイクされるきっかけとなっていた」と悲観していない。
関東大学リーグ戦初戦は8月31日、長野・サニアパーク菅平Cグラウンドでおこなわれる。相手は昨季6位の拓大だ。