東京五輪へ。ボークコリン雷神が描く「ゴールドメダル+α」のビジョン。
名前に雷神を入れた。日本の格闘ゲームのキャラクターだった雷神を気に入り、古来より伝わる風神と雷神の逸話に共鳴したためだ。
ニュージーランド出身のラグビー選手で2012年来日のコリン・ボークは今年、日本国籍を取得。日本名をボーク コリン雷神とした。現在の目標は、7人制日本代表として2020年のオリンピック東京大会でメダルを獲ることだ。
身長191センチ、体重110キロというずっしりとした身体で、球を持てば適宜パワーとスキルを発動。7月20日は東京・秩父宮ラグビー場で、15人制の試合に出る。トップリーグカップのプール戦・第5節で、リコーの先発FLとして複数人を巻き込んで前進したり、防御の裏へキックを転がしたり、接点周辺での味方とのパス交換を経てトライを決めたり。下部リーグから参戦のマツダを82-0で制した。
現在は本職のFW第3列に固定されるが、一時は司令塔のSOにも入ったことがある。15人制と7人制は試合時間や1人あたりの守備範囲などから似て非なる競技と謳われるが、その器用さと強さは汎用性が高そうだ。
神鳥裕之ゼネラルマネージャー(GM)兼監督が「スキルフルな選手でゴールキックも一番うまい。トップリーグ内では1~3番以外の全てのポジションでできそうな、稀有な選手です」とするなか、本人は言った。
「(7人制では)フィットネス、スピード、ボールスキル、ビジョン。それが一番、大事。ゴールドメダルを目指しています。どの国にもチャンスはありそうですが、日本は観客に応援してもらえる。あと1年、しっかり準備できれば」
国籍を変えたわけは「リコーで日本人としてプレーしたいから」だった。確かに外国人枠外で戦えれば、チームの起用法の幅を広げられる。
過去に7人制ニュージーランド代表でプレーしたことのあるボークは、トップリーグのレギュレーションなどを調べたうえで「日本人になって7人制日本代表になれば、日本の15人制日本代表でもプレーできるようになり、そうなればリコーでも日本人として試合に出られる」と認識。ナショナルチームでの活躍を誓うのは、所属先で最大限の貢献を果たすためでもあった。
国際統括団体のワールドラグビーが選手の代表資格取得への審査を厳格化したためか。今年6月まで続いた世界サーキットのセブンズワールドシリーズでは、ボークの7人制日本代表デビューがおあずけとなった。本人は「チャンスを待つしかない」とするが、オリンピックへ出場は「問題ない」と強調する。
7人制日本代表は現在、都内で「オリンピックシミュレーション」という本番及びその直前期と同じスケジューリングによる合宿を実施中だ。リコーの神鳥GM兼監督は「具体的にどんなサポートができるかは関係者と話していきたいですが、チームとしてその舞台(オリンピック)に送り出せるようにはしていきたい」と説明。本人はこうだ。
「カップ戦で身体が疲れてはいるので、少しブレイクしてまた再開できれば」
今度のやりとりの一部は日本語だった。マオリの国からやってきた34歳の雷神は、真夏の東京で嵐を起こしたい。