パナソニックとサントリーの「フラストレーション」とは。
温厚な性格で知られるパナソニックで就任6季目のロビー・ディーンズ監督は試合後の会見中、「フラストレーションの要素が多かった」と話した。
7月19日、東京・秩父宮ラグビー場。日本のトップリーグのカップ戦の予選プール最終節があり、パナソニックがサントリーに19-23で敗れていた。
序盤は対するSOのマット・ギタウを軸にした連続攻撃を食らい、前半11分までに0-10とされた。以後は自軍のSOの山沢拓也の閃きによるスコアで接近し、蹴り合いからチャンスを作って一時勝ち越し。しかし最後は、後半10分、19分のペナルティゴールで沈められた。
オーストラリア代表監督、スーパーラグビーのクルセイダーズの指揮官を歴任したディーンズ監督は「サントリーさんにはおめでとう言いたい」と、相手のまとまりあるスクラムなどに賛辞を贈る。その一方で、「フラストレーション」をためた本質的な理由については「私の口から話すことはいたしません。できれば皆さん(記者団)のほうで話しておいて欲しいというところです」とし、手にしていたマイクをテーブルにドン、と立てた。
この日は、危険なプレーの有無やトライの成否などを映像で見返すテレビマッチオフィシャル(TMO)が幾度も採用された。結局は反則が確認されなかったシーンもあったため、スタンドからはため息が漏れた。
後半10分のサントリーの得点時も、パナソニックの選手がサントリーの球を持たない選手へ低く突き刺さったシーンをノーボールタックルと判定されていた。TMOの末に、である。ここではタックルされた選手が実際にパスを受け取った選手の手前にいた。「ボールより前でプレーをしてはならない」という競技特性上を踏まえれば、見解の分かれそうな局面ではあった。
一方、試合が大詰めを迎えた同39分。TMOによってタックルをしたと見られたサントリーの選手が一時退場処分を受ける。最後は自陣ゴール前で防戦一方も、CTB村田大志のタックルで落球を誘った。サントリー、辛勝。
TMOが重なった過程について、勝った田原耕太郎コーチングコーディネーターは「レフリングに対してではなく、自分たちの自滅した部分にフラストレーションがたまってはいました。(TMOが)多いということはそんなに(思わなかった)」。かたやディーンズ監督は、同じ話題に触れて「笑えるようなことではない。恥ずかしいことです」と首を傾げる。出場した選手の1人は、後に自身のSNSで「(担当レフリーは)自信を持って吹けばいい。我々はそれに従うのだから」といった旨の声明を出している。
「あのTMOを見てどう思われましたか。判断の内容についてはどうですか。たくさんオーロラビジョンに映像が映っていましたが、クリアになっていない部分とは何だったのでしょうか」
質問した記者へこのように聞き返したディーンズ監督は、こうまとめた。
「それをメディアの皆様も言えないのだとしたら、厳しい状況ですね。この話からはもう離れましょう」
山沢は攻撃の連動性を改善すべきと見たのか、「個人としての声がけをしていきたいと思いました。(素早く的確な指示ができれば)FWの人たちもやることが明確になって、そうなればもっと動けるようにもなると思うので」と簡潔に述べた。対するギタウは「序盤に勢いを作れました。最初と最後の10分間は、パナソニックに勢いを与えてしまいました。両チームとも勝つチャンスを作れた」と勝利に安堵した。サントリーはカップ戦でプレーオフ進出を決めた。トップリーグは国内最高峰の舞台と言われている。