コラム 2019.06.18

【ラグリパWest】神戸で人生初めての日本一を。平原大敬(神戸製鋼PR/HO)

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】神戸で人生初めての日本一を。平原大敬(神戸製鋼PR/HO)
機動力もある。2番も3番もできる。チームにとって貴重な存在。(撮影/榎本芳夫)



 神戸製鋼ではフッカーではない。
 平原大敬(ひらばら・ひろたか)は右プロップで先発した。
 珍しくタイトヘッドもこなすことができる。
 サイズは176センチ、113キロ。NTTコミュニケーションズ8人の重さが、真っすぐのみならず、右外からものしかかる。

 最初のスクラムはかろうじてキープした。2回目はめくられる。3回目もぐらつく。それでも味方はトライにつなげた。開始6分までは不安定。平原は苦笑いを浮かべる。
「相手もそこが強みです。すぐに修正ができませんでした」

 後半に入った2分には逆にスクラムを押した。両足のスタンスをやや広げたようにも見えた。32歳のベテランらしく、巧者の印象を残し、10分に交替した。

 神戸製鋼は平原にとって所属3チーム目。6月15日、ホームの灘浜であった最終試合は47−17で快勝した。1週間後の22日からトップリーグのカップ戦が始まる。

 今年度、豊田織機から移籍した。プロ選手として2年契約が終わったあとだった。
「日本一のチームから声をかけてもらえた。自分の力を試したい、と思いました」

 愛知・刈谷では、トップリーグでも屈強の1列目にいた。左から川俣直樹、平原、長江有祐。左右の1年先輩は、ともに日本代表キャップ18を持っていた。
 昨年度、公式戦は休息の1試合をのぞく13試合に出場した。すべてフッカーだった
「いい勉強させてもらいました」
 技術の吸収に富む時期を過ごした。

 神戸製鋼の現場トップ、チームディレクターの福本正幸は獲得理由を説明する。
「フッカーがいませんもんね。それに彼はプロップもできますし」
 スクラムセンターにおいて、現段階で計算が立つのは日本代表キャップ9を持つ有田隆平のみ。鹿田翔平はケガがちの評価。バックローから転向した西林宏祐や長崎健太郎はまだハイレベルの経験が少ない。

 年齢を危惧する声があるが、福本は意に介さない。フロントローは年よりも、スクラムを組み込んだ数、すなわち経験がものをいうことを知っている。自身、慶應大でプロップに転向。このチームの7連覇を支えた。

 この試合でフッカーに入ったのは有田だ。2人はコカ・コーラの元チームメイトでもある。神戸製鋼には有田が1年早く加入した。平原より2学年下の30歳は振り返る。
「3、4年ぶりに一緒に試合に出ましたが、組みやすい。身長も僕と同じくらいですから」
 背丈は有田が1センチ高いだけ。肩がそろえば一枚岩になりやすい。平原は言う
「フッカーとしてはライバルだけど、プロップとしてはいいパートナーです。彼がいてくれて心強いです」


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