コラム 2019.06.17

【コラム】 Union Cup:ラグビーと多様性

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【コラム】 Union Cup:ラグビーと多様性
Union Cupで優勝したKings Cross Steelersの集合写真。前列右下が筆者

 前回のラグビーワールドカップ、2015イングランド大会決勝のレフリーを務めたナイジェル・オーウェンズは、6月9日にアイルランドのダブリンでおこなわれた「Union Cup」の決勝で笛を吹いていた。

 Union Cupとは、LGBT+を公認する欧州のアマチュアクラブチームで競われる大会で、2年毎に開催場所を変えておこなわれる。今回で8回目。6月7日から3日間にわたってダブリンで開催された。
 LGBT+とは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性別違和)、また他の性的マイノリティーの総称である。最近では、オーストラリア代表のイズラエル・フォラウによるSNS上での性差別発言がラグビー界のみならず、スポーツ界で大きな物議を醸している。

アイルランドのダブリンでおこなわれた今年のUnion Cupの開会式

 その渦中でおこなわれたUnion Cupに参加した者として、特に印象に残った期間中の景色を読者の皆様に少しでも共有できればと思う。
 45チームが15か国から参加した今大会、開会式にはアイルランドのキャサリン・ザポン大臣をはじめ、アイルランドラグビー協会、アイルランド代表選手などが祝辞を述べた。なかでも、冒頭のザポン大臣の愛と情熱に溢れたLGBT+を全面的に支持する旨のスピーチ後には、会場はスタンディングオベーション、拍手はしばらく鳴り止まなかった。筆者の知りえないような普段の苦悩、自分を包み隠さず表現できる安堵、感謝を感じた。

試合会場のLGBT+カラーのゲート

 翌日には予選リーグが始まる。スウェーデン、ドイツ、オランダなどラグビーがあまり人気ではない国からの出場もあり、そういった選手たちと比較的容易に交流できる点は欧州の、またアマチュアクラブ大会の特権であり、横のつながりを加速させていた。多様な国籍、言語、年齢、そしてセクシャリティーを、ラグビーが見事につないだのだ。
 決勝リーグに進んだチームへ、敗退したチームがフランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語など多彩な言語でサイドラインからエールを送る姿も美しく、強く印象に残っている。

 ラグビーは時に痛く、汚く、苦しい。だが、それを知るからこそ、人の本質、他人の苦しさを理解でき、誰をも受け容れることができる。そこにはスポーツ界全体をもリードする存在になり得る可能性を秘めていると、筆者は信じている。

 ラグビー憲章に掲げられている「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」。一つも欠けることなく、全てがそこにはあった。

(文:奥村直大)

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