「浪人」経て世界目指す原田衛、慶大&U20日本代表での挑戦に迫る。
昨年のいま頃は浪人生活を送っていた慶大ラグビー部の原田衛は、ふたつの資質を磨いている。
ひとつめは万能性。スクラム最前列中央のHO(2番)で活躍した原田だが、今季はその隣の左PR(1番)にも挑戦する。目下参戦中の関東大学春季大会でも、背番号1をつけることがあった。
ふたつの位置でスクラムを組めば、局面ごとの互いのニーズを皮膚感覚で把握できる。もともとはチーム事情や学生コーチからの提案を踏まえて転向したのだが、いまは自らの立場を前向きに捉える。
「1番でも2番に活かせることはあるので、どちらもできる形になればいい。僕的には、そう解釈をしています」
もうひとつ磨いているのは、リーダーシップだ。参加しているU20日本代表関連の活動では、チームリーダーのひとりに指名されている。
4~5月は、オーストラリアでのオセアニアラグビーU20チャンピオンシップでニュージーランド、オーストラリア、フィジーの同年代代表とぶつかり全敗。「フィジカルで勝てないという感じではなかったのですが、相手は崩すのがうまい。(1対1で)止めてはいるんですが、そのなかでオフロードをつながれたり、一瞬の隙を突かれたりして……」と悔やんだ。
ここで反省点に挙げたのが、福井翔大主将が故障した際の自らの「声」だった。
「試合中に声をかけることが難しかった。普段から意識していきたいです」
今後は所属先での練習時から周りへの声掛けを習慣化し、本番でも主体的な指示出しができるようになりたいとした。
7月にブラジルでおこなうワールドラグビーU20トロフィーへも「将来、世界で戦いたい。(U20日本代表の大会メンバーに)選ばれたら、いい経験をしてそれを次につなげていきたいと思っています」と意欲的。6月5日からU20日本代表候補にあたるTIDキャンプ(都内)へ帯同し、栗田工業との試合形式練習に参戦した。
合宿最終日にあたる9日には、慶大の春季大会(対 大東大/神奈川・慶大日吉グラウンド)へ先発予定である。タフに戦う。
「(U20日本代表としては、世界に)通用する部分もありましたが、(攻撃中に)相手が急に前に詰めてくると慌てちゃって……というところがある。相手の動きへの対応力、判断力を養いたいです」
身長175センチ、体重103キロ。神奈川・桐蔭学園高時代から万能フロントローとして活躍した。
かねて早大か慶大でラグビーを続けたいと考え、高校3年時は冬の全国高校ラグビー大会に出ながら一般入試対策に時間を割いた。待っていたのは、厳しい現実だった。
「センター試験の約2週間前には花園の決勝。(本番までに)全然、時間がなくて……」
いま慶大にいるのは、昨年、慶大の9月入試が叶ったからだ。総合政策学部のAO入試をパス。入部間もなかった9月のうちから、チームが加盟する関東大学対抗戦Aでプレーした。
「大学に落ちてからラグビーを辞めようかとも思っていたんですけど、ちょうど試験があったので、ラグビーに挑戦してみようと思って。将来やりたいこともラグビーだったので、いち早く入部できる9月入学(への受験)を決めました。先輩たちは優しいので、チームにはすんなり入れました。浪人の間もウェイトしたり、週に1回の走りのトレーニングもしていたので(入部後すぐにフィットできた)」
当時は受験勉強よりも肉体強化に時間を割いていたと自覚し、「浪人と言ったら、本当の浪人の人に怒られると思います」と笑う。自己を客観視できるのも強みだ。