【ラグリパWest】担当は、部員=勧誘、監督=楽しさ。大阪府立高津(こうづ)高校
「ラグビーは楽しい」
高津高校の部員たちは口をそろえる。
大阪では「こうづ」と読む。
昨年、創立100周年を迎えた府立校は、今秋の全国大会予選のシード権を獲得した。
山口優(ゆう)は振り返る。
「ようやってくれました」
不惑の監督は保健・体育教員でもある。
高津はこの春の第74回府総合体育大会(総体=春季大会)で4連勝した。
57−0桃山学院、38−26千里、17−14布施工科、26−22浪速。シード権は副賞だ。
府から全国大会には3校出場できる。
3つの組み合わせやぐらの上にはシードのA、下にBが入る、そして、それらと4強で対戦を予定するのがCの6校になる。
シードのAは大阪桐蔭、常翔学園、東海大大阪仰星。Bは関大北陽、大阪朝高、大産大附。Cは同志社香里、早稲田摂陵、興國、摂津、金光藤蔭、そして高津に決まった。
12校中、公立は2校のみ。体育科のある摂津と府下有数の進学校の高津である。
今春の大学合格者数は東大2、京大12、阪大29。前身は旧制の府立第十一中学だ。学校は近鉄電車の大阪上本町と鶴橋の両駅間、北側にある。このあたりは太閤秀吉の時代、400年以上前からすでに街中だった。
創部年は定かではない。昭和の初期、1930年ごろの可能性もある。
「OB戦には80歳くらいの方も来られます」
全国大会や近畿大会の出場はない。それでも、山口や女子マネ6人を含む部員40人によってチームは引き継がれている。
シード権を得たのは、山口にとって赴任12年目で初めてのことである。
その間、年に3回ある15人制の府大会に出られなかったのは1回だけだ。
「2年目の春を棄権しました。ケガ人がたくさん出てしまいました」
シード権も当然ながら、スポーツ推薦もない進学校であるにもかかわらず、合同チームを形成していない歴史は注目に値する。
そのための役割分担ははっきりしている。
<連れて来るのは部員。楽しさを教えるのは監督>
山口は笑いを交える。
「僕は強面(こわもて)なんで」
先生から生徒への勧誘は上から下になる。同じ立場の方が効果は大きい、との判断だ。体育の授業前後に声をかけることもない。
今年3月に卒業した上田匠は強者だった。
昼休み、1年生のクラスに弁当を持ち込み、一緒に食べながら誘いまくった。
仲良くなってラグビーを近づける。ベースにあるのは山口のコーチングへの賛辞。そのため、上級生は本気で声をかける。
今年の入部は9人。経験者は4人。半数以上はここで楕円球に初めて触れる。
大山悠伎崚(ゆきたか)はそれまでやっていたバレーボールとの選択に悩んだ。
「体験入部に行ったら、そのあと先輩たちがグイグイ来ました」
その熱心さに引かれる。3歳上の兄・未起崚(みきたか)がOBだったこともあった。
「連れてきてくれたら、僕の出番です」
山口はプレーを一から丁寧に教える。
タックルは立っている選手に走って行って肩を当てる。次は持ち上げて数歩前に出る。そしてディフェンスに入る。
パスも4人でつなぐ長さを5、10、15メートルと広げていく。最後は攻撃のラインを引く。すべてをつながらせる。1週間ごとにメニューは変え、飽きさせない。