国内 2019.05.24

本日の「テーマ」は? 早大・柴田徹寮長の奮闘。

[ 向 風見也 ]
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本日の「テーマ」は? 早大・柴田徹寮長の奮闘。
関東大学春季大会の東海大戦でプレーする早稲田大の柴田徹(撮影:井田新輔)

 早大ラグビー部の寮長を務める柴田徹が悔やむのは、「全員が目を切った」という瞬間だった。

 5月12日、神奈川・東海大グラウンドでのことだ。この午後は東海大との関東大学春季大会Aグループ初戦にFLで先発。後半からペースを上げて一時36-28とリードを奪いながら、後半ロスタイムに36-40と勝ち越されていた。
 
 もっとも柴田が取り上げたシーンは、まだ22-21と競っていた後半16分のワンシーンだ。早大は自陣ゴール前でのスクラムで反則を取られるや、向こうのNO8の吉田大亮が速攻。そのままトライとコンバージョンを決められ、22-28とされてしまったのだ。

 実はこの日を通し、早大はスクラムで劣勢だった。東海大が自由にプレーを選べるこの瞬間は、きっとスクラムを選ばれるだろうと柴田たちは早合点してしまったようだ。

「僕を含め、全員が(相手から)目を切った。緩慢でした。そこを東海大さんがしっかり見ていた。一枚も二枚も上手でした」

 身長173センチ、体重89キロ。決して大柄ではないが、ロータックルとリロードを繰り返すハードワーカーとして昨季からレギュラー格とされてきた。グラウンド外でも持ち前のバランス感覚ときまじめさが買われ、今季は寮長を託された。桐蔭学園高時代からの同級生、齋藤直人主将の意を受けた。

「まじめが取り柄だと思っていて、それを求められている。新しいルールを作って、皆が住みやすくなるように」

 柴田の働きぶりには、齋藤主将は「厳しいですよ」と笑いながら感謝。柴田は、注力するトレーニングルームの清掃についてこう説明した。

「ラグビーは人間性が出るスポーツだと思っている。そういうところ(普段から規律を守ることなど)から意識して、それをラグビーにつなげられればと思っています」

 ただ「厳しい」だけではない。普段から選手がフランクに話し合える雰囲気を作るべく、始めたのは浴室でのある取り組みだ。購入してきたホワイトボードを浴室に置き、そこへ日ごとに「テーマ」を記す。その「テーマ」をもとに、浴室での会話を盛り上げたいと柴田は言う。

 緊張と緩和。その妙味をにじませる。

「お風呂場がコミュニケーションの場になればと思って。プライベートな内容まで、盛り上がっています!」

 春の練習で意識する点を問われれば、「(東海大戦で)緩慢なトライをされたなかでこんなことを言うのは恥ずかしいのですが」としながらこう述べた。

「ディテールを突き詰めようと、言ってきました。…まだまだだったということを、きょうの試合で、痛感しました」

 2008年度以来となる16度目の大学日本一を狙う早大は、続く19日には東京・早大上井草グラウンドで流経大を51-24で制した。これで戦績を1勝1敗とした春季大会の3戦目は26日に長野Uスタジアムであり、相手は慶大となる。

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