イングランド×スコットランドは38-38。今季6か国対抗最終戦はまれにみる熱戦。
試合開始前にウエールズがアイルランドを破って全勝優勝を決めたため、この試合の結果に関わらず、2位の座が決まっていたイングランドは、3月16日、ホームのトゥイッケナムで4位の座を賭けたスコットランドと戦った。
ファイナルスコアは38-38。この結果、スコットランドは5位で大会を終えた。
2敗で大会を終えたアイルランドを、ボーナスポイント(4トライ以上、7点差以内の敗戦で与えられる大会勝ち点)で上回っていたため、勝っても負けても2位の座が決定していたイングランドにとっては、さに消化試合(英語圏ではDead Rubberと呼ばれる)だった。
しかし、立ち上がりから猛攻を見せたイングランドは、開始1分にはカウンターアタックからの展開で、ジャック・ノーウェル(WTB)がトライを挙げる。
その後も、ドライビングモール、巧みな展開と、BK、FWが一体となった攻撃を仕掛け、28分にはジョニー・メイ(WTB)のトライとオーウェン・ファレルのゴールで、31-0とリードを広げた。
イングランドは、エリオット・デイリー(FB)の鋭い走りと、技巧派でならすヘンリー・スレイド(CTB)の絶妙なパスワークで、再三に渡りディフェンスラインを撹乱した。
対するスコットランドは、34分にスチュアート・マキナリー(HO)が中盤でファレルのキックをチャージ。そのまま走りきる走力を見せて一矢報いるも、31-7と一方的な展開でハーフタイムを迎えた。
しかしこの試合は、異様な後半を迎えることになる。
後半開始後、まるで別のチームとなったかの如く勢いに乗るスコットランドは、46分、49分、56分、59分と、19分間で4トライを挙げた。フィン・ラッセル(SO)のロングパスが見事に決まり、キックのバウンドが見事にチェイサーの胸元に弾む。試合の「流れ」は、明らかにスコットランドへ傾いた。
75分には、ディフェンスの穴を突いて裏に抜けたサム・ジョンソン(CTB)が、4人のタックラーを振り払ってトライを奪う。
キックも決まり、31-38と逆転に成功。スコットランドのサポーターも数多く訪れたこの日のトゥイッケナムは、大きくどよめいた。
イングランドは、伝統の応援歌「スウィング・ロウ、スイート・チャリオット」をバックにラストワンプレーでトライ、ゴールを決めて同点に追いついたが、後半のスコアはスコットランドの31得点に対して、イングランドはこの7点のみ。
前後半の互いの得点が「31-7」、「7-31」という、滅多にない試合だった。
「選手としても、指導者としても、こんな試合には関わったことがありません」
スコットランドのグレガー・タウンゼンド監督は試合後にそう話した。マキナリー主将は、「一本取ったら、もう一本と、とにかく信じ続けた」と、奇跡の同点劇を振り返った。
対するイングランドのファレル主将は、「試合をコントロールし切れなかった。後半は、落ち着いていつものプロセスにもっていくことができなかった」と悔しさを滲ませた。
この点について質問されたエディ・ジョーンズ監督は、「オーウェンは、まだ若いキャプテンです。いいキャプテンになるには多くの経験が必要だし、時間が必要です」と、昨年から主将を務める27歳の若武者をかばった。
今年も数多くのドラマを生み出し、欧州を沸かせたシックスネーションズ。
最終戦がおこなわれたトゥイッケナム競技場のバーは、興奮冷めやらぬ両国のサポーターたちで、夜遅くまで賑わっていた。