各国代表 2019.03.01

シックス・ネーションズに見る ジャパンのライバルの弱点とは?

 ヨーロッパ最強の座を争う「シックス・ネーションズ」は、2月23、24日で中間点となる第3節を終了した。ワールドカップイヤーである今年のシックス・ネーションズは、大会そのものの優勝争いだけでなく、9月20日に開幕するラグビーワールドカップを見すえ各国の仕上がり具合やチーム状態をチェックする機会という意味でも、例年以上に多くの見どころがある。ここでは、ワールドカップで日本代表の最大のターゲットとなる2国――アイルランドとスコットランドの現状と、これまでの戦いで浮かび上がったウィークポイントを掘り下げてみたい。

シックス・ネーションズに見る ジャパンのライバルの弱点とは?
ワールドカップで日本と同じプールに入ったアイルランドとスコットランド(Photo:Getty Images)

 2018年のワールドラグビー年間最優秀チーム賞を獲得し、グランドスラム(全勝優勝)を果たした前回に続いて今年も優勝の最有力候補と前評判高かったアイルランドだが、開幕戦でイングランドに20-32と屈し、手痛い黒星スタートとなった。ホームのアヴィヴァ・スタジアムで敗れたこと自体ダメージの大きい敗戦だったが、何よりショッキングだったのは試合内容だ。接点のバトルで劣勢を強いられ、鋭い出足で間合いを詰める相手ディフェンスのプレッシャーをまともに受けてエラーを連発。看板の防御でも、縦の強さと横のスピードにキックによる前後の揺さぶりもまじえたイングランドの隙のない攻撃を食い止めきれず、4トライを許してボーナスポイントまで奪われてしまった。

 ジョー・シュミット ヘッドコーチが6シーズンかけて築き上げてきた現在のアイルランドの最大の強みは、攻守とも頑健に体を張り、規律を保ちながら圧力をかけ続けて、相手が我慢し切れなくなったところでたたみかける勤勉さと粘り強さだ。しかしイングランド戦では、パワープレーによる前進を阻まれると攻撃が手詰まりになり、キックを上げてなだれ込む単調な攻めに終始する傾向が顕著だった。この流れは勝利した第2節のスコットランド戦も変わらず、「強みをシンプルに押し出す」というスタイルが明確なぶん、仕掛けの多彩さでは南半球勢やイングランドほどの怖さはないという印象だ。フィジカルで押しつぶしにくる相手に対し、すばやく前に出て勢いがつく前に体を当て、高速リアクションで防御陣形を維持し続けて、キックを蹴り込んできたところできっちりボールを確保する――というのが、ジャパンの勝利の条件と言えるだろう。

 逆に、堅牢なアイルランドの組織ディフェンスを攻略する鍵は、スピードとキックだ。体格とパワーで上回る相手に正面からぶつかっても、まず勝ち目はない。一方でただキックを蹴り込むだけでも、簡単に相手にボールを渡すことになる。組織として速く動けるジャパンの特長を最大限に生かし、相手のポジショニングが追いつかないテンポで攻撃を継続して、イングランドのように「プレッシャーをかけた上で空いたスペースへピンポイントのキックを配する」ことが重要になる。

アイルランドの攻撃の勢いがつく前に、日本は素早く前に出て体をぶつけ続け、活路を見出したい (Photo:Getty Images)

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