コラム 2019.02.15

【コラム】キャプテン翼、キャプテン直人。

[ 中川文如 ]
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【コラム】キャプテン翼、キャプテン直人。
早大の新主将に就いた齋藤直人。(撮影/松本かおり)


 キャプテン翼みたいなキャプテンをめざしているんだな、この人は。決意表明を聞いていて、そう感じた。
 ピンチな時ほど、みんなから頼られる。どんな期待にも、必ず応える。そんなキャプテンをめざしているんだな、と。

 早大の新主将がSH齋藤直人に決まった。
 納会にあたる「予餞会」が2月10日に開かれ、公の場で指名された。
 5年ぶりに年越しを果たし、でも10年ぶりの大学日本一、早大流に言えば「荒ぶる」獲得はならなかった4年生の代表、背番号20のFLだった前主将・佐藤真吾がマイクの前に立つ。

 いつも通りのちょっと早口で、ちょっと前のめりな語り口で後輩たちに託した。
「リザーブだった僕も含めて今季の4年生は先発が少なかった。だからこそ、直人たちの代は、誰かの思いを背負って戦う意味を、どの代より理解してくれている。勝てると信じています」
 齋藤がマイクを受けた。
「何事にもチーム一丸となって取り組む。4年生が築いてくれた文化を継承し、荒ぶる奪回に挑みます」

 部歌「北風」をリードして合唱した後。さっそくメディアに囲まれ、齋藤はちょっとだけたどたどしく、でも力に満ちた言葉を連ねた。
「僕、しゃべるのは苦手なんです。だからって、行動で示すだけのキャプテンにはなりたくない。自分の中にあるラグビーへの熱さを、行動で示せる自信はある。それを言葉でも伝えられるキャプテンになりたい」

 運動量、スピード、技術。SHに必要な要素をあまねく備えたそのプレーに言及する必要は、いまさらない。相良南海夫監督が就任への経緯を説明してくれた。
「部員の投票は、ほぼ満票。でもジャパン入りの可能性もあるので、もしかしたら重荷なるかもしれない。『大丈夫か?』って聞いたら『やります』と」
 本人の覚悟はこうだった。
「責任が伴う立場。信頼していただけるのなら、やりたかった。自分自身の成長にもつながる。悩みはしなかった」

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