コラム 2019.02.15
【コラム】キャプテン翼、キャプテン直人。

【コラム】キャプテン翼、キャプテン直人。

[ 中川文如 ]
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 対抗戦で8年ぶりに優勝したものの、帝京大には惨敗。迎えた全国大学選手権、対抗戦で勝っていた明大に準決勝で雪辱された。
 勝って負けて試合の細部にレビューを重ねた1年。組織づくり、雰囲気づくりという俯瞰的な視点からも齋藤は顧みていた。
「真吾さんたちがつくってくれたチームはすごく仲が良かった。ただ、同じことを繰り返しても優勝はできない。選手同士でもっと競い合って、腹をくくって話し合って、本当の意味での競争を経て、まとまるチームをつくりたい。みんな、目的は同じ。厳しく言い合って関係が悪くなったりはしないはず」

 FL幸重天に副将を頼んだ。神奈川・桐蔭学園高で主将を担った際の副将は、いまも同僚のFL柴田徹。もう一度、彼に頼もうかとも頭をよぎったけれど、「徹は役職がなくてもリーダーシップを発揮してくれるから」と考えを変えた。
「チーム全体を見渡したくて。徹も僕も1年生の頃から試合に出させてもらって、正直、下のチームの気持ちをわからない部分がある。幸重は下のチームを知っている。上と下でモチベーションに差があったら絶対に勝てないから」

 主将の重荷を背負うと、良くも悪くもチーム優先、肝心のプレーが鈍ってしまう主将がいる。この悪循環には陥るまいとの意欲もあふれる。
 例えば自慢のフィットネス。「まだまだ伸ばせる。フィットネスって、結局、最後は自分との戦い。みんなに示していきたい」。

 昨年秋には学生で唯一、日本代表候補に選ばれた。いまは外れているが、むしろ、渇望は膨らんでいる。
「ワールドカップに出たい気持ち、あります。早稲田での一日一日を大事にして、いつ呼ばれても力を発揮できるように準備したい」
 100人を超える部員全員を引っ張り上げ、束ねる。同時並行で、4年に一度の大舞台をめざす。
 この人は、全てをやりきろうとしている。

 追伸。
 予餞会にはOBも集う。幼い頃の齋藤をスクールで指導したあるOBが、日曜出勤の合間を縫って駆けつけ、すぐ中座した。
「直人がキャプテンになるっていうから」と時間を惜しんで。
 自ら頑張ることで、いつのまにか「コイツのためなら」と周りを巻き込めるのが齋藤という人。
 キャプテン翼を連想してしまう。

【筆者プロフィール】
中川文如(なかがわ ふみゆき)
朝日新聞記者。1975年生まれ。スクール☆ウォーズや雪の早明戦に憧れて高校でラグビー部に入ったが、あまりに下手すぎて大学では同好会へ。この7年間でBKすべてのポジションを経験した。朝日新聞入社後は2007年ワールドカップの現地取材などを経て、2018年、ほぼ10年ぶりにラグビー担当に復帰。ツイッター(@nakagawafumi)、ウェブサイト(https://www.asahi.com/sports/rugby/worldcup/)で発信中。好きな選手は元アイルランド代表のCTBブライアン・オドリスコル。間合いで相手を外すプレーがたまらなかった。

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