国内
2018.12.22
神戸製鋼のアダム・アシュリークーパー、決定的スコア導いた敬意と感性。
神戸製鋼が望み通りに後半の先手を取れたのは、アダム・アシュリークーパーのおかげだった。加入2年目の戦士はこの日、アウトサイドCTBとして先発していた。オーストラリア代表117キャップの34歳は、一連のプレーに関する「敬意」と「WTBの走り方」を語った。
12月15日、東京・秩父宮ラグビー場でのトップリーグの決勝。2連覇中のサントリーを相手に22−5とリードしてハーフタイムを迎え、ニュージーランド代表112キャップのSO、ダン・カーターいわく「ハーフタイム後の10分が大事だ」。ねじを締め直し、ロッカー室からグラウンドへ戻った。
6分、敵陣22メートル線付近右で相手ボールスクラムを組む。球を出したサントリーが神戸製鋼側から見て左へ展開するなか、赤いジャージィは防御網をせり上げる。
3つめのパスをジャンプしながら捕ったFBの松島幸太朗の懐へ刺さったのが、アシュリークーパーだった。ずっと味方と列をなしていたと思いきや、松島にボールが渡るや単発で飛び出す。姿勢をかがめる。日本代表30キャップの名ランナーを、絶妙なロータックルでひっくり返した。ターンオーバー。
松島の出足を封じたこの場面について、当の本人は事前分析の成果だと語った。
「この決勝に向け、私は敬意を表しながら松島選手のことをたくさんレビューしてきました。きょうの私の明確な意図のひとつは、松島選手をいかにシャットアウトするかということです。それは彼が素晴らしいアタッカーだからです。彼の才能を活かしたアタックをいかにさせないかが私にかかっていました。私は常々、対戦相手に敬意を表するのは大事だと思っていて、その敬意があったからあのタックルができたのだと思います」
アシュリークーパーの準備が実ったタックルは、神戸製鋼に攻撃権を与えた。選手が各々の立ち位置へ散らばるなか、地面の球を拾ったSHの日和佐篤は右へ、左へと順にパスアウト。FLの橋本大輝ゲーム主将が左タッチライン際を破ると、その右隣でLOのトム・フランクリンが突進する。
日和佐がさらに右へつなごうとしたところで、またもアシュリークーパーが現れた。接点の左斜め後ろから鋭角に駆け込む。攻防線上へ向かうLOの張碩煥をおとり役にして、日和佐からパスをもらうや追いすがるタックラーをわずかずつかわす。そのままインゴールへ手を伸ばす。スコアを27−5とし、ぐっと白星を手繰り寄せた。
この貴重なトライシーンでは、自身がよく務めるWTBの位置でのプレー経験が活きたと話す。チャンスメーカーとして期待されるCTBに比べ、WTBはトライへの嗅覚が求められる。
「自身のキャリアにおいてWTBとしてプレーすることが多かったので、その経験をもとにあそこがチャンスだと思った。今年の神戸製鋼では、あのような9番(SH)を起点とした攻撃でのトライが多かったので。今週はCTBでプレーしていたのですが、あのタイミングではなぜかWTBの走り方をしていました」
身長183センチ、体重96キロというサイズに加え、インテリジェンスでも光るアシュリークーパー。この日は大外のスペースを突き破るランもアピールし、加入2年目にして日本一に輝いた。
(文:向 風見也)