国内
2018.11.10
東海大・丸山凜太朗、リーグ戦逆転Vへ期待通りの仕事ぶり。
東海大ラグビー部で、1年生が活躍した。それに対する指揮官、木村季由監督の談話は「あれぐらいは、普通にできる」。ただただ期待通りだった、との意味だ。美辞麗句による称賛よりも、当該選手への評価の高さがかえって伺える。
話題に挙がったのは丸山凜太朗。東福岡高2年時に高校日本一を経験したSOだ。身長173センチ、体重80キロと大柄ではないが、周囲への簡潔なコーリング、安定したスキル、的確にスペースをえぐる判断力で信頼を勝ち取っている。
11月10日、東京・秩父宮ラグビー場。加盟する関東大学リーグ戦1部の法大戦で背番号10をつける。チームは10月28日の流経大戦をミス連発で33−33と引き分けており(秩父宮)、この日に向けては防御の基本事項を総ざらい。3試合ぶりに復帰の丸山も、すべきことを明確にしていた。
敵陣の相手がいないスペースにキックを放ち、陣地を獲得したい、と。
「まずポイントができた時に両裏(両サイドの奥側のことか)を見る。それで、(接点付近の味方から)パスをもらったら(相手の防御網が)上がってくるじゃないですか。その上がってきたところで、キック、と。敵の動きを見て」
言葉通り安全運転に務めながら、要所で閃きのあるプレーも披露した。前半10分のチーム2本目のトライのきっかけは、この人のビジョンとスキルだった。
敵陣中盤左中間でパスをもらった丸山は、防御網に迫られながらグラウンドの右端に高い弾道のキックを蹴る。味方の長身WTBである望月裕貴が捕球し、タッチライン際でボールを継続。まもなく法大の反則を誘い、ペナルティキックからラインアウトモールに移ってスコアを12−0と広げた。
「あれは、(法大の反則による)アドバンテージが出ているなかでした。もともと今週の練習でモッチーと(呼吸を)合わせていたので、チャレンジしました」
起点となる足技をこう振り返った丸山は、以後も防御網の裏に鋭いキックを蹴り、必要に応じて自らランを仕掛けた。
この日は援軍にも恵まれていて、隣のインサイドCTBに入った眞野泰地は「できるだけ周りを見て、皆の考えがクリアになるように丸山とコミュニケーションを取りながらやっていました」。元20歳以下日本代表主将の3年は、若き司令塔と事細かに連携。自軍の攻撃陣形や相手防御の様子などを共有し、無理のないプレー選択を促した。眞野はキックチェイス、相手タックラーを引きつけながらのパスでも光った。
「泰地さんは縦(前)に出てくれるので、リズムが出せました。FWが(ボールを持って前に)行っている時に、泰地さんと話しながら(試合を進めた)」
こう感謝を口にする丸山は、点差が離れていた終盤には自身のトライセーブタックル、ジャッカル(接点で球に絡むプレー)も披露。39−17で快勝したのだった。
「きょうは敵陣、敵陣へ、と前に出られた」
ここまで5勝1引き分けで、勝ち点は22とした。25日には秩父宮で、昨季王者の大東大と対戦。相手は今季の勝ち点で24と上回るだけに、東海大は逆転優勝を狙う立場だ。昨季全国4強の東海大は前年度の同カードを5―12で落とし(11月18日/東京・江戸川陸上競技場)、リーグ戦3連覇を逃している。リベンジが期待されるなか、丸山はこう展望する。
「2週間後に一番大事な試合が待っている。僕がやることは、FWを前に出させる。FWを前で戦わせる。まだまだもっとよくなる。きょうで満足せず、さらに上を目指したいです」
以前、快勝したある試合を終えて「きょうの相手、帝京大(大学選手権9連覇中)ならもっと点を取ってますよ」と話すなど、常に高みを見据えている丸山。木村監督の「あれぐらいは普通に…」を聞かずとも、自身の改善点を見つけていよう。大学生としても頂点に立つべく、努力を止めない。
(文:向 風見也)