国内
2018.08.30
若いチームで成長誓う。NTTコム石井魁の「プライオリティー」とは。
内なる芯はぶれない。でも、異なる環境には柔軟に適応したい。思考するフィニッシャー、石井魁が、新天地での活躍を誓う。
新たな職場はNTTコム。国内最高峰のトップリーグで前年度9位の新興チームだ。
「チームが計算できるピースになりたいと思っています。移籍1年目だからとか、環境が変わったからとかいう言い訳をせず、ラグビー選手として自分がやれることをやっていきたいです」
学生時代は東京都の古豪である保善高、関東大学リーグ戦1部で上位争いをする東海大に在籍した石井。2016年からの2シーズンはトップリーグで通算5度の優勝を誇る東芝でプレーしてきた。
これまでの在籍先に感謝を述べながらも、この春、社員からプロへの転向を目指すべく環境を変えた。
NTTコムは2010年にトップリーグ初昇格した若きクラブで、最高位は一昨季の5位。2014年就任のロブ・ペニー ヘッドコーチが唱えるワイド攻撃はすっかり浸透しており、スタッフ陣はさらなる上昇のワンピースに活きのいいWTBを探した。
要は、石井のような選手が欲しかった。本人は改めて言う。
「何を自分のなかでプライオリティーを置くかを考えていて。それまでは伝統、歴史、文化のある素晴らしいチームで成長させてもらいましたし、それが僕の原点ではあります。ただ、NTTコムのようないままで経験したことのないようなチーム、組織で、自分がどれだけ成長できるか。(移籍の理由としては)そこが大きかったふうに思います。(今度の決断が)最終的に正解だったと思えるようにやれることをやりたい」
身長179センチ、体重85キロの25歳。強靭な足腰とスピード、何よりスペースで球をもらうためのポジショニングとコミュニケーションの質に定評がある。日本代表への初招集は東海大時代と早く、今季も移籍早々にサンウルブズに追加招集されスーパーラグビーを経験している。
NTTコムで出場した練習試合でもトライを量産した。パスを左右に振るなか、抜け出した味方を首尾よくサポート。そのまま突っ切る。もっとも当の本人は「たまたまです。過程を見てもらえれば」。自らのランよりも、それを引き出したチームの連係に話の焦点を集める。
その時々で取ったトライに酔わないのは、目指すステージが高いところにあるからだろう。新天地で勝ち星を積み重ねた先で、日本代表デビューも果たしたいという。
「上で戦っていけるようなパフォーマンスを出せるように、コツコツやっていく。もっと自分のレベルを上げていかないと、チームでも、その先でも戦えないと思っている。もっと上を目指していきたいです」
トップリーグ開幕間近の8月29日、「第二次ラグビーワールドカップトレーニングスコッド」が発表された。2019年のワールドカップ日本大会に向け、日本代表側が強化に関与する選手のリストである。5月にリリースされた「第一次」になかった石井の名も入っており、薫田真広強化委員長も「以前よりスピードと力強さがついた。(スコッド決定前におこなった)フィットネステストでも全体で1番」と言及した。
そして31日、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場。NTTコムは神戸製鋼とトップリーグ初戦をおこなう。先発出場が期待される石井が、世界に通ずるタッチライン際の一本道を走る。
(文:向 風見也)
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