海外
2017.02.17
世界のラグビーを語る。〜コーチの目・栗原徹編〜
多彩なスタイル、勝負へのこだわり。
フランスのラグビー、欧州のラグビーは勉強になる要素が盛りだくさん
WOWOWがフランスリーグTOP14、シックス・ネーションズを放送したことで、従来よりもグッと身近になった欧州ラグビー。自分のプレーへのヒントや、移籍する機会を求める選手たちとは違った視点で熱い視線を注いでいるのが各チームのコーチ陣だ。栗原徹さんは、日本の若手コーチの中でも知識、経験、スキルを兼ね備え、将来の日本ラグビーを担う指導者と目されている。栗原コーチの見たフランスラグビー、欧州ラグビー、そして世界のラグビーとは?
――栗原さんと海外ラグビーの出会いを教えて下さい。
最初は大学生の頃、慶大のコーチだった林雅人さんが、ちょうど始まったばかりの頃のスーパーラグビーの映像を、よく合宿所で見せてくれていたんです。当時はクルセーダーズとブランビーズが2強でしたが、僕はオーストラリア代表FBだったジョー・ロフが好きで、どっちかというとブランビーズを応援していました。ロフはスピードがめちゃめちゃあるわけじゃないけれど、間合いだったり、チェンジオブペースのタイミングだったり、ボールをもらう位置だったりが絶妙で、すごく勉強になりました。
――北半球のラグビーについては。
興味ありました。日本代表にいたとき、その頃イングランドのサラセンズにいた岩渕健輔さん(現・女子日本代表15人制強化委員長)と一緒になる機会があって、その頃僕は22歳か23歳だったのですが『22〜23歳はもう若手じゃないぞ、世界に出るなら早く出て行った方がいい』とアドバイスされて。それから海外でのプレーを模索したんです。どこの国はどんなラグビースタイルで、どこのクラブにはどんなチームカラーがあるか、チャンスがあるとしたらどんな形か…というような情報を、集められるだけ集めました。イングランドは雨が多くてキックが主流だとか、フランスはボールを繫ぐラグビーが多いとか。僕自身、ボールを持って走りたい方だったし、できればフランスでやりたいと思っていました。実は、話がまとまる直前まで行ったチームもあったんです。残念ながら流れてしまったけれど、今もときどき『もしあのとき移籍できていたらどうなっていたかな』と思うときはあります。(笑)
――そのフランスに、五郎丸選手が移籍しました。
ホントに羨ましいですよね。五郎丸は行っただけじゃなく、実際に試合に出ましたからね。もちろん、試合にずっと出られているわけじゃないし、本人がどんな気持ちでいるかは分からないけれど、やっていることは100%正しいと思う。あの環境にいることがどれだけ大変なことか。そりゃあ、以前の人たちに比べたらサポートが分厚いように見えるかもしれないけれど、いつでもサポートしてもらえるわけじゃないし、ピッチの中では実力勝負しかない。今は思い通りにいかないこともあるだろうけれど、それも含めてものすごく良い経験になるはずです。僕からしたら、それさえも羨ましいです(笑)。
しかも、今のTOP14は、リーグ全体がすごく面白くなっている。上位チームはどこも独自のチームカラーを持っている。その中で、ラシン92なんて、たった1年で完全にダン・カーターのチームになるような、フレキシブルなところもある。フランスのラグビー自体、何かひとつのことを徹底すると言うよりは、いろんなアイデアを持っているスタイルだし、選手にとってもコーチにとってもすごく勉強になると思います。
――シックス・ネーションズはどうご覧になっていますか。
堅いゲーム運びが多いですよね。良いラグビーをするよりも、勝つラグビーをするという意志を強く感じる試合が多い。言い換えると、『自分がやりたいプレー』よりも『チームを勝たせるプレー』を優先する。
僕自身、コーチになってからは、『勝つためにどんなプレーを選択するか』というミーティングでシックス・ネーションズの映像を使うことが多いんです。たとえばアイルランドのSO(スタンドオフ)ジョナサン・セクストンなんて、足が速いわけでも、ステップやランニングスキルが高いわけでもないけれど、パス、キックの基礎スキルが高くて、デシジョンメークが素晴らしい。セクストンがパスを受ける直前でビデオを止めて『ここから何をするだろう?」と若いSOに考えさせる。すると、彼らの予想と違うプレーを選択していることが多いんです。それは実際に対戦している相手にとってもそうなんでしょうね。だから相手ディフェンスは対応できない。抜けていくわけです。『セクストンはなぜこうデシジョンしたのか』ということについて意見を出し合うと、面白いミーティングになります。
今年のシックス・ネーションズに関しては、やっぱりイングランドが軸になると予想しています。そこにアイルランド、ウェールズがどう対抗していくのか。フランスがどう盛り返していくのか。スコットランドは選手層が薄いけれどいいラグビーをしているし、イタリアも頭を使っている。6チームがそれぞれのチームカラーを持って戦うのがシックス・ネーションズの面白いところですし、それ以外も含めて、海外のラグビーには、本当に多くのヒントがあると思いますね。
栗原徹(くりはら・とおる)
1978年8月12日、茨城県生まれ。清真学園中1年でラグビーを始め、清真学園高から慶大に進学。慶大3年で大学選手権優勝、2001年サントリー入りし、年間全タイトル(ジャパンセブンズ、東日本リーグ、社会人大会、日本選手権)制覇+単独チームで初めてのウェールズ代表撃破を達成。2008年NTTコムに移籍。日本代表には慶大4年でデビューし、通算27キャップ。2003年ワールドカップの4試合であげた40得点は、2015年大会で五郎丸が更新するまで日本代表のワールドカップ1大会個人最多得点記録だった。2014年現役を引退し、NTTコムのスキルコーチに就任。2016年には日本代表のスポットコーチを務めた。
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★「ラグビー フランスリーグ TOP14」
ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。五郎丸歩選手が所属するRCトゥーロンの試合を中心に毎節2試合放送!
第18節:
RCトゥーロンvsリヨン 2/19(日)午前4:30〜[WOWOWプライム]
モンペリエvsトゥールーズ 2/19(日)深夜2:15〜[WOWOWライブ]
★「生中継!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ」
ヨーロッパのラグビー強豪6カ国が参加して行なわれる大会の模様を全15試合生中継!
第3節:
スコットランドvsウェールズ 2/25(土)夜11:10〜[WOWOWライブ]
アイルランドvsフランス 2/25(土)深夜1:40〜[WOWOWライブ]イングランドvsイタリア 2/26(日)夜11:50〜[WOWOWライブ]
第4節:
ウェールズvsアイルランド 3/11(土)午前4:50〜[WOWOWライブ]
イタリアvsフランス 3/11(土)夜10:15〜[WOWOWライブ]
イングランドvsスコットランド 3/11(土)深夜0:45〜[WOWOWライブ]
最終節:
スコットランドvsイタリア 3/18(土)夜9:15〜[WOWOWライブ]
フランスvsウェールズ 3/18(土)夜11:35〜[WOWOWライブ]
アイルランドvsイングランド 3/18(土)深夜1:50〜[WOWOWライブ]
■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイト(wowow.bs/rugby)をチェック!
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