海外
2017.02.17
世界のラグビーを語る。〜コーチの目・田邉淳編〜
多彩なスタイル、勝負へのこだわり。
フランスのラグビー、欧州のラグビーは勉強になる要素が盛りだくさん
WOWOWがフランスリーグTOP14、シックス・ネーションズを放送したことで、従来よりもグッと身近になった欧州ラグビー。自分のプレーへのヒントや、移籍する機会を求める選手たちとは違った視点で熱い視線を注いでいるのが各チームのコーチ陣だ。自身も日本代表でプレーし、昨年のサンウルブズや日本代表でコーチを務めた、田邉淳さんの見たフランスラグビー、欧州ラグビー、そして世界のラグビーとは?
――田邉さんの海外ラグビーとの出会いを聞かせて下さい。
僕は高校1年のとき、ニュージーランドのクライストチャーチに留学しました。1994年6月。行ってすぐ、クライストチャーチでオールブラックスとフランスの試合があったんです。この試合が実は、ジョナ・ロムー(WTB/ウイング)のデビュー戦だったんですね。フランスではまだフィリップ・セラ(注:1980‐1990年代に活躍したCTB/センター。通算111キャップ)が出ていた時代です。
そもそもは、父親がラグビー好きで、子どもの頃から一緒にテレビでラグビーを見ていたのが、ラグビーとの関わりの始まりです。当時はNHKでファイブ・ネーションズを放送していて、VHSのデッキでビデオに録画して見ていたんですが、野球中継の延長で後半が録れていないときがあったりして、オヤジが激怒してましたね(笑)。時間変更対応システムなんてありませんから。そんな時代でした。
――当時、フランスには興味があったのですか。
フランスではテストマッチの前のセレモニーで、グラウンドにニワトリを放つんですよね。テレビで見ていても、アレは面白かったな。画期的でしたね。ラグビースタイルも他の国とは違うユニークさがありますしね。
でもフランスのことに詳しかったわけじゃないです。2012年にエディー・ジャパンの欧州遠征でフランスに行って、ビアリッツで試合をしたんです。そのときあのセルジュ・ブランコ(注・1980〜1990年代の名フルバック、93キャップ。『ラグビーの王様』と称された)がいたんですよ!びっくりして、すぐに写真を撮ってもらいました。でも、他の選手は誰もブランコって言っても反応しなかったな。もっとも僕にしても、ビアリッツがブランコの地元だっていうことも知らなかった。フランスに詳しかったわけじゃないです。
――田邉さんは日本代表で五郎丸選手と日本代表FBのポジションを争い、トップリーグの得点王やベストフィフティーンを争ったライバルでもあります。五郎丸選手のフランス挑戦をどうご覧になっていますか?
日本の選手が外国に行くのは五郎丸が初めてじゃないけれど、日本代表の中心選手で、しかもゴールキッカーを務めている選手というところに意味があると思いますね。日本の選手が海外のトップクラブでキッカーを務めたら、日本でラグビーをしている子どもたち、小中学生、高校生でキッカーをしている選手たちにとって、すごく大きな目標になる。
特にフランスTOP14は、1試合平均で1万5000人の観客が入るという、世界一集客力のあるリーグですから。それだけの注目を浴びて、プレッシャーもかかる中で、日本人選手がゴールキッカーを務める。そんな場面をぜひ見てみたいです。
――田邉さんは15歳から25歳までニュージーランドで過ごしたわけですが、ラグビーの位置付けも日本とはだいぶ違うのでしょうね。
スポーツを楽しむことが生活に根付いていますね。スタジアムにしてもラグビー専用のところがほとんど。日本は陸上用のトラックがあるところが多い。そこが一番の違いですね。ニュージーランドに限らず、オーストラリアでもヨーロッパでも、ほとんどのスタジアムで観客とグラウンドが近い。スタジアムにはコーポレートボックスがあったりして、ビジネス上の社交の場にもなっていますよね。
その中でもフランスの場合は、資金が豊富で海外の選手を積極的に獲得していますよね。まあ、フランスTOP14でプレーしている選手の中で、フランス代表資格のある選手は40%くらいしかいないと聞いたことがあります。
コーチングの分野で言うと、ニュージーランドでは選手の育成について、国全体でコーチングマニュアルが確立している。オールブラックスのコーチ陣だけでなく、ニュージーランド中のコーチが全員、オールブラックスが求めている選手を育成するというコンセンサスが徹底しているんです。
ニュージーランドには「Good people make good Allblacks」という言葉があります。良い人間が来れば来るほど、オールブラックスは良いチームになる。いいキャラクター=人格を持った選手を育成すれば、イコール強いオールブラックスを作ることになるという考えです。僕も、パナソニックのコーチングにしてもサンウルブズのコーチングにしても、いい選手、いいリーダーが主体性を持って取り組んでくれるチームを作って、日本で開かれる2019年のワールドカップだけでなく、2023年、2027年にもつなげていきたいと思っています。
田邉淳(たなべ・あつし)
1978年6月25日、奈良県生まれ。4歳のとき茨木ラグビースクールでラグビーを始め、15歳でニュージーランドに留学。クライストチャーチのシャーリーボーイズ高からカンタベリー教育大に進み、2002年にカンタベリー地区選抜に選出。2003年、帰国して三洋電機(現パナソニック)でプレー。2009年度トップリーグ得点王、2007、2009、2010年度トップリーグベストフィフティーン受賞。ポジションはフルバック。2010年に日本代表デビューし、キャップ3を持つ。2014年に現役を引退、パナソニックでコーチ就任。2016年からサンウルブズ、日本代表でもコーチを務める。
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★「ラグビー フランスリーグ TOP14」
ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。五郎丸歩選手が所属するRCトゥーロンの試合を中心に毎節2試合放送!
第18節:
RCトゥーロンvsリヨン 2/19(日)午前4:30〜[WOWOWプライム]
モンペリエvsトゥールーズ 2/19(日)深夜2:15〜[WOWOWライブ]
★「生中継!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ」
ヨーロッパのラグビー強豪6カ国が参加して行なわれる大会の模様を全15試合生中継!
第3節:
スコットランドvsウェールズ 2/25(土)夜11:10〜[WOWOWライブ]
アイルランドvsフランス 2/25(土)深夜1:40〜[WOWOWライブ]イングランドvsイタリア 2/26(日)夜11:50〜[WOWOWライブ]
第4節:
ウェールズvsアイルランド 3/11(土)午前4:50〜[WOWOWライブ]
イタリアvsフランス 3/11(土)夜10:15〜[WOWOWライブ]
イングランドvsスコットランド 3/11(土)深夜0:45〜[WOWOWライブ]
最終節:
スコットランドvsイタリア 3/18(土)夜9:15〜[WOWOWライブ]
フランスvsウェールズ 3/18(土)夜11:35〜[WOWOWライブ]
アイルランドvsイングランド 3/18(土)深夜1:50〜[WOWOWライブ]
■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイト(wowow.bs/rugby)をチェック!
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