国内
2016.10.15
NEC&サンウルブズで急成長の茂野海人、ジャパン落選の思いを語る。
なぜ、日本代表に入らなかったのか。当の本人は、落ち着いた口ぶりで応じた。
「行けたら行きたいです。ああいうレベルの高いところでやるのは、楽しいので。ただ、選ばれないことには行けない。悔しい反面、自分でもあまりいいプレーができていないのがわかっている。日々、精進してゆくしかないかな、という感じですね」
茂野海人。ここ数年で急速なレベルアップを果たしたSHだ。
昨年はニュージーランドへ留学すると、ニュージーランド地域代表選手権であるITMカップのオークランド代表入り。レギュラーにも選ばれた。
今季は、国際リーグのスーパーラグビーへ参戦。日本チームであるサンウルブズに加わり、11試合、プレーした。
6月はその流れに乗り、サンウルブズのスタッフが率いる日本代表にも加わる。現地時間11日のカナダ代表戦でテストマッチ(国際間の真剣勝負)デビューを飾ると(バンクーバー・B.Cプレイススタジアム/○26−22)、18日のスコットランド代表戦(愛知・豊田スタジアム/●13−26)で初先発。続く25日のスコットランド代表戦でもプレーし(東京・味の素スタジアム/●16−21)、速攻からの得点演出などでスタンドを沸かせた。
しかしこの秋、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)率いる日本代表へは選出されなかった。10月に発表されたツアー参加候補メンバー37人(後の追加招集含む)に名前がないどころか、水面下で作成された50名程度のスコッドにも加われなかったという。
11月にはワールドカップ前回大会4強のアルゼンチン代表など、強豪とのテストマッチを控えている。それだけに25歳の成長株の落選は、驚きとともに伝わった。9月に来日したジョセフHCは、8月下旬からの国内最高峰トップリーグのゲームを視察。ともにセレクションに携わったとされる薫田真広ディレクター・オブ・ラグビーは、選考基準を「(試合の)パフォーマンスです」とのみ語っていた。
SHの位置に名を連ねたのは、常連の田中史朗、開幕6連勝中のヤマハから矢富勇穀といった31歳のキャリア組、さらに茂野の同級生でもある東芝の小川高廣の3人だ。
10月8日、埼玉・熊谷陸上競技場。NECの一員として3連覇中のパナソニックと戦った茂野は、こんなふうに前を見ていた。
「特に何も話していないですけど、50数名の候補にも入っていなくて。あぁ、トップリーグでのプレーが良くないんだな、と理解しました。自分的にも、(パフォーマンスが)よくはなかったので」
日本代表再選にはまず、チームを勝たせるプレーをする。グラウンド中盤で相手が反則をすれば、果敢に速攻を仕掛ける。
「NECの場合はテンポを上げ過ぎるとうまくいかないことがある。そこは優さん(SO田村優)と一緒にコントロールしていっている。ただ、勢いがない時に勢いを出すプレーができたら、とは思っています」
さらに自陣ゴール前に押し込められた後半6分頃には、接点からテンポよく球を出そうとするSH田中へ激しく身体をぶつけていた。
そう言えばパナソニックのSH内田啓介が、筑波大時代に入っていた日本代表でも定位置争いをしていたSH田中について「同じポジションの選手に対するプレッシャーがすごい」と話していた。いわば茂野は、自然と本家さながらの圧力をかけていたこととなる。
26−51で屈した後、淡々と述懐した。
「フミさんが倒れている間は、パナソニックの攻撃が少し遅くなる。だから、自分で意識して行きました。きょうはちょいちょいといいプレーもあったけど、チャンスでミスをする悪い伝統が出てしまった。ああいうところは、直していきたいです」
来季のスーパーラグビーのチームとの契約については、いつだって「何とも言えない」と苦笑する。もっとも関係者の話では、サンウルブズからのオファーを受けている可能性が高い。一時は再び海外へチャレンジする可能性も探っていた茂野だが、いまは視野を国内に絞っていよう。
「きょうも、観ていておもしろいプレーも何個かあったかな、とは思います。観客の方にそういうプレーを観てもらったら、もっとラグビーも広がる」
いずれにせよ、まずは目の前のトップリーグのゲームに集中する。15日、千葉・柏の葉公園総合競技場で6連勝中のサントリーとぶつかる。
(文:向 風見也)