先輩・リーチも認める! 全勝優勝狙う東海大の職人、FL藤田主将の狙撃
関東大学ラグビーリーグ戦1部では、11月7日、昨季2位の東海大が東京・秩父宮ラグビー場で同4位の大東大に38-7で勝利。6勝0敗の勝点24で首位となり、22日の流経大(6勝0敗、勝点24)との一戦で全勝優勝を狙う。
殊勲者の1人は、FL藤田貴大主将だ。身長175センチ、体重96キロと一線級のフォワードにあっては小柄だが、密集戦での粘り強さと激しさが高く評価される。9、10月のワールドカップイングランド大会の中継を録画し、時間のある際に「いいジャッカル(球を奪うプレー)があったら巻き戻して観返したりしていた」ようだ。
球を持ち込んだ際のミスが響き、5-7とビハインドを背負っていた前半終盤。自陣ゴール前右でさらなるピンチを迎える。相手ボールスクラムの場面。FL藤田主将はしかし、冷静だった。
大東大のパックの最後尾には、身長194センチ、体重103キロの1年生ランナー、NO8アマト・ファカタヴァがいた。FL藤田主将は察した。
「来るかな」
スクラムの脇から、NO8アマト・ファカタヴァが飛び出しそうだった。刹那、FL藤田主将は決断した。NO8アマト・ファカタヴァの走路を塞ぐSOの守備位置に、CTB鹿尾貫太を立たせた。本来のSOである野口大輔とのポジション交換を、その場で指示したのだ。自身のジャッカルの成功率を高めるため、味方に思い切りのよいタックルをして欲しかったからだ。
周りを慮りながらも、正直に述懐する。
「大東大さんは2人目のサポートプレーでルーズなところがある。狙っていこう、と。CTB鹿尾は思い切りよくタックルに行ける選手。一方、SO野口もいいディフェンスをするんですけど、(ゲームを動かす役割の)彼にはプレッシャーをかけたくなかった」
スクラムからボールが出る。大東大のNO8アマト・ファカタヴァが突進。その足元へ、東海大のCTB鹿尾がタックル。FL藤田主将は、ボールに絡みついた。ダニエル・マンジン レフリーの笛が鳴る。追加点を狙った大東大は、倒れたままボールを手離さないノット・リリース・ザ・ボールの反則を犯す。ピンチを脱した東海大は、後半、逆転した。
チームは初の大学選手権制覇を目指す。現在6連覇中である帝京大との激突に際し、あるコーチは「このままでは…」と手厳しい。5月24日の春季大会で19-59(東京・帝京大百草グラウンド)と屈した相手に勝つには、攻防ともにプレーの質をより高めたいところか。渦中、FL藤田主将はあえて前を向く。
「相手のプレッシャーやサポートはもっと強くなる。そんななか、ブレイクダウン(接点)を制圧したい。その思いで1年間、やってきている。今後もぶらさずにやっていきます」
ちなみにこの人、日本最高峰であるトップリーグの選手からも熱い視線を浴びている。例えば東海大の先輩で日本代表主将のFLリーチ マイケル(東芝)は、後輩の献身的なプレーを観てこう言ったことがある。
「必要ですよ、ああいう人が」