いいぞ、『RUGBY RADIO』。日本ラグビーでもはやく導入を。
ラグビーが進化し、プレーのクォリティーが高まるとともに、ファンの要求は増す。それにともなってスタジアムでのサービスも向上する。いま、世界のラグビー場はファンを楽しませる仕掛けでいっぱいだ。実際ワールドカップでも、観戦に訪れたファンは一流のプレーを堪能するととともに、試合の前後も祭典の空気を存分に吸い込む。スタジアムでなくとも、街の中に快適なファンゾーンが設けられていたりして、様々なファン層へのアプローチがある。
スタジアムのゲート近くで試合プログラムとともに売られているものに『RUGBY RADIO』というものがある。これはレフリーマイクの声やスタジアムでの実況中継が聞けるもので、レフリーのジャッジの理由がわかるとともに、ゲームの内部を理解したり、ピッチ上で起こっていることを知るのにとても便利なもの。選手の声も拾うから、臨場感がさらにアップする。
ラグビー先進国のスタジアムの空気がいい理由のひとつは、贔屓チームに関係なく、素晴らしいプレーには称賛をおくり、ゲームをスポイルするプレーにはブーイングを起こすファンの反応だ。何がいいプレーで、何がゲームをつまらなくしているのか。それが分かる観戦力は、多くの試合の観戦を重ねてきたからだろうが、周囲に目利き(自称も含む)の家族や仲間がいたからこそ身についたもの。この『RUGBY RADIO』は、同じような役割をしてくれるもののひとつだ。
ワールドカップではメディアにも配られ、とても役立った。ホイッスルが吹かれた理由が分かる。レフリーがプレーヤーに話しかける内容を知る。気付くのは、レフリーたちが必要最低限の声しか発していないことだ。反則を防ぐ声かけや、コミュニケーションをとるタメのものはあるが、うるさくない。もちろん個人差はあるが、全体的にそんな印象を受ける。
世界的には、2000年過ぎからスーパーラグビーの会場ではファンも手にできる環境があった。当時は用意されている台数に限りがあり、試合前に有料で貸し出し、試合後に返却するシステム。ワールドカップでは2003年大会からメディアに配られ、ファンも気軽に手にできるようになった。
2019年にはワールドカップを開催する日本ラグビー。ファンサービスのひとつとして導入すべきもののひとつだろう。世界レベルのスタジアムの空気を作る一助にもなれば、今大会のジャパンの躍進でラグビーに興味を持った新しいファンのルール理解を助けるものになる。また、ホイッスルの理由が広く知られることで、レフリー自身も技術力向上の責任感が増すに違いない。
日本でのワールドカップまで、あと4年。突然やって来たラグビーブームの勢いをさらに大きくするためにも、11月中旬開幕のトップリーグから導入できないものか。開幕が無理でも、クライマックスに間に合えばファンへの大きなプレゼントになる。