国内 2025.09.18

AZ-COM丸和MOMOTARO’Sがリーグワンに向けて発進。藤田慶和も開幕戦FBで出場。

[ 鈴木正義 ]
AZ-COM丸和MOMOTARO’Sがリーグワンに向けて発進。藤田慶和も開幕戦FBで出場。
モールを押し込む丸和FW陣。接点では丸和が山梨を上回った(写真:アズコム丸和提供)



 丸和運輸機関は埼玉県に本社を置く運送・ロジスティクスの会社だ。「桃太郎便」と書かれた可愛らしい桃太郎のマークのトラックを見かけたことのある人も多いだろう。

 しかし何年後かには「ラグビーの会社」として広く知られる存在になっているかも知れない。そんな勢いを感じるのがここ数年のAZ-COM丸和MOMOTARO’Sだ。

 創部は2013年と比較的チームの歴史は新しく、トップイーストリーグが現在のA、B、Cの3グループ制になった2020年はまだCグループだった。その後2022年にBグループ昇格、2023年Aグループ昇格、2024年にはAグループ優勝と、華麗なサクセスストーリーをここまで歩んできたチームだ。そして、2025年にはリーグワン参入を表明し注目を集めている。

 その躍進を支えるのが積極的な選手の強化だ。今シーズンも9人の大学新卒選手に加え、9月のシーズン開始直前に8人の追加選手を迎えている。この中にはPR東恩納寛太(前・NECグリーンロケッツ東葛)、PR五十嵐優(前・豊田自動織機シャトルズ愛知)、CTB南橋直哉(前・横浜キヤノンイーグルス)など、リーグワンを知るベテラン選手が名を連ねる。
 中でも注目は、日本代表として2015年のW杯にも出場したFB藤田慶和(前・三重ホンダヒート)だ。

丸和ジャージでのデビューとなった藤田慶和。豊富な経験がチームにどんな化学反応がおきるか楽しみだ(写真:アズコム丸和提供)

 果たして藤田らリーグワン経験者がどのような化学反応をチームにもたらすのか、チームにとってトップイースト開幕戦となる対クリーンファイターズ山梨戦の模様を取材した。

 9月13日、山梨県南アルプス市の御勅使南公園(みだいみなみ)ラグビー場は小雨模様。序盤は丸和がスクラムを支配、ペナルティからのラインアウトでモールを押し込むというパターンで山梨陣地に迫る。

 しかし山梨もしぶといディフェンスでボールを奪いキックで逃げ、苦しいながらも完全に流れを丸和に渡さない。圧勝を期待し山梨まで駆けつけた丸和ファンからはため息が漏れるシーンも何度かあったが、それでも前半は3トライを奪って19-0とした。

「自分の役割が果たせず悔しかった。ハイボールの処理やキックなど、まだ精度を上げてゆかなければならない」

 この状況に対し、藤田は試合後厳しめの表情でそう振り返った。昨シーズンは怪我で1年間試合から遠ざかっており、新チームに合流して1か月の初戦。思い通りのプレーができなかったのも無理からぬところはあるだろう。しかし、リーグワンを目指すことの厳しさを知っている藤田の合格点はもっと高いところにある。

 後半に入っても、丸和は山梨のしたたかなディフェンスと雨というコンディションもあり、思うように攻められない。逆に後半7分には山梨FL松本雄大(山梨学院大)にトライを奪われ、地元山梨ファンで埋め尽くされたスタンドから大歓声があがる。

反撃のトライに雄叫びをあげる山梨FL松本雄大。長野出身で山梨でプレー、練り物が苦手という海なし県キャラだ

 なお、この日は地元南アルプス市の市長、富士川町の町長も応援に駆けつけ、両自治体の計らいにより両チーム選手にはこの時期が旬のシャインマスカットなどが贈呈された。今後フルーツの収穫期に山梨ホーム戦を希望するチームが増えそうな、嬉しいサプライズだ。関東協会も日程調整に苦労することになるかも知れない。

 試合に話を戻そう。1トライを返されたものの、やはり地力では丸和が勝る。大半の時間を相手陣地で費やし、スクラム、モール、全ての接点で強さを感じさせる。

 しかし山梨のタックルの精度も高く、雨の中ルーズボールになる展開も多くトライまでが遠い。ここは山梨のディフェンス力を素直に褒めるべきだろう。

 残り10分となったところで、後半藤田に代わってFBに入ったリコ・サイムがギャップを突いてトライ。しかし後半の丸和はここまで。後半の得点だけ見ると7-7のイーブン、トータルでは26-7と勝利はしたものの、昨年の覇者としてはやや物足りない結果だったかも知れない。

 数々の国際的な檜舞台にも立ってきた藤田の目に、今の丸和というチームはどう映ったのだろうか。

「GM兼監督の細谷さんが(リーグワンを目指すという)素晴らしいビジョンを掲げている。こうした勢いのあるチームでプレーしたいという思いがあり、このチームに加わった。会社としてのサポートもとても良く、全てにおいて勢いを感じる」

 チームのHPを見るとスポンサー企業は160社を超える。ファンクラブも組織され、企業の実業団チームという枠組みを超えて、着実にリーグワンチームとしての体制が整いつつあることが窺い知れる。
 藤田らラグビーファンになじみの顔がグラウンドでプレーすれば、さらにこの勢いは加速してゆくだろう。

「自分がFBとして一番後ろから見ていると、ポテンシャルの高い選手が多い。若い選手が迷わないよう、声をかけるようにしているが、自分もまだチーム合流から1か月ほどで、コンビネーション、コミュニケーションの部分でこれから良くしていけることは多い」

 今後シーズンが深まるにつれ、丸和の持つポテンシャルが解放され、グラウンドで爆発する時を見ることができるだろう。その中で藤田らリーグワンを知る選手たちの果たす役目は大きそうだ。

 丸和は次回9月27日東大丸和グラウンド(千葉柏市)でホスト開幕戦、同じくリーグワン入りを表明している日立SUN NEXUS茨城と対戦する。

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