【ワールドカップ】女子日本代表が最終戦でスペインを破り、大会初勝利を掴む。齊藤聖奈「やっぱり勝つって最高」

■ワールドカップ2025イングランド大会
・9月7日@ヨーク・コミュニティ・スタジアム(ヨーク)
【女子日本代表 29-21 女子スペイン代表】
NO8で先発したンドカ ジェニファの答えに、この勝利の価値、大きさが滲んだ。
次のワールドカップでより良い結果を残すために何が必要ですか?
報道陣にそう問われ、こう返した。
「このワールドカップに来るまでに、みんなで本当に努力してやってきたので…。そうですね…すみません、勝ったことが嬉しすぎて他のことは考えられないです」
ノックアウトステージ進出の目標が立たれて迎えた、ワールドカップの第3戦。
女子日本代表はイングランド北東部のヨークで女子スペイン代表と対戦し、29-21で破った。
ワールドカップでの勝利は2017年大会(11位決定戦・香港戦)以来、2大会ぶりで、1次リーグでの勝利は、1994年のスコットランド大会(スウェーデン戦)以来31年ぶりだった。
ンドカの問答を横で爆笑しながら聞いていたNO8齊藤聖奈は、「やっぱり勝つって最高です」と破顔した。
ただスコアで上回っただけではないことが、満開の笑顔の理由なのだろう。
「特に後半は自分たちがやってきたことをすべて出し切ったと言えるくらいの内容でした。それが勝利に繋がったということがとても良かったです」
スペインとはワールドカップ直前の7月に、国内で二度対戦していた。いずれも勝利を収められたが、前半は苦戦した。
この舞台でもやはり、簡単なゲームとはならなかった。
ただ、今回もニュージーランド戦に続き、先制パンチをかませた。
前半6分、スクラムで得たPKを起点に敵陣22メートルライン内に侵入。一度はボールを手放すも、直後にすぐ相手の落球を誘う。
左中間でのスクラムからショートサイドを崩し、最後はこの日アグレッシブに走り続けたFB西村蒼空が左コーナーに飛び込んだ。
しかし、以降は自らの手で得点機を逸した。LO佐藤優奈、FL長田いろは主将のスティールで敵陣深くに幾度も入ったが、ノックフォワードなどのエラーでスコアはならず。
11分にオフロードパスを連続で繋がれて5-7と逆転を許すと、38分にはゴール前で12フェーズを重ねられ、追加点も挙げられた。

レスリー・マッケンジーHCは前半を「取り急いでしまった」と振り返り、ただ、「我慢強さ、忍耐強さを本当に誇りに思う」とも語った。
ハーフタイムで選手たちにこう声をかけたという。
「前半に数多くあったポジティブな点をすべて集めて、少し辛抱すれば後半にその報いを得られる」
レフリーの笛にもアジャストできた(反則は前半の7に対して後半は2)後半は、培ってきたセットプレーを前面に出せた。
反撃開始は5分だ。FL川村雅未の好タックル、NO8ンドカのスティールで自陣を脱出すると、モールでペナルティを奪う。
敵陣22メートルライン内に入れば、FL長田主将が元BKらしくステップで相手をかわし、そのままトライゾーンに入った。
2点差としたその後も、堅守で得たPKからモール→トライのパターンで得点を重ねた。
17分の逆転トライは、相手の落球を誘うCTB古田真菜のタックルから。
SO大塚朱紗、FB西村が果敢に走り、モールで二度、PKを勝ち取る。最後はPR北野和子がねじ込んだ。
22分の追加点はNO8齊藤聖奈のスティールが起点となった。
敵陣ゴール前まで迫って右に展開、SO大塚からWTB今釘小町に渡り、斜めに走り切る。22ー14までリードを広げた。
相手のシンビンを受けて数的優位となったサクラフィフティーンは、29分にもトライを挙げた。
モールでの前進で敵陣22メートルライン内に入り、FW勝負に徹した。
「ここで絶対に取り切ろう」と声をかけ合いながら20フェーズを重ね、最後はLO櫻井綾乃のサポートを受けたNO8ンドカがトライラインを越えた。
29-14として大勢を決めた後も集中力を切らさず、相手のラインアウトにプレッシャーをかけたり、攻め手に回ってモールを押した。
試合終了間際にはCTBの突破を許して8点差で詰め寄られるも、最後は相手のモールからボールをもぎ取り、ボールをタッチラインの外に出した。
歓喜の笛が鳴った。
レスリーHCは「スタッフが何十時間も費やしてきた以上に、プレイヤーたちは何十時間も我慢を、何十時間も努力を重ねて、たくさんの汗をかいてきた」と称え、「これ以上ハッピーに思えることはないくらい」と笑顔で語った。
3大会目の出陣となったチーム最年長の齊藤は、「自信を持ってセットピースはワールドクラスだと言えるようになった」と今大会の充実を語り、サクラフィフティーンの未来をこう展望した。
「ブラックファーンズとアイルランドと戦って、ランニングスピードやフィジカルの強さなどの個人スキルにはまだ差を感じました。そこを15人でどうカバーしていくのか、もう少し考えていかないといけない。フィジカルはこれから4年間積み上げれるものがあるので、4年後は違ったものが見られると思います」
自身の今後については、「4年後は37歳なので少し厳しいかなとは思います」。
この大会での役割は果たせたと誇った。
「2試合負けてから3ゲーム目に向かうメンタリティ、負けた後のメンタリティ、気持ちの処理の仕方、過ごし方は見せられたと思います。目標には届かなくても、(3試合目は)自分たちがフォーカスしてきたことを世界中の皆さんに見せることができるチャンス。ノンメンバー、ベンチ、スターティング関係なく、全員で作り上げていくことが大切と伝えました」
チーム一丸で戦えたことは、ンドカも強調した。
今大会は1戦目がメンバー外、2戦目にリザーブ入りし、この日は先発出場を飾った。
初の大舞台で力を発揮できた理由に、周囲の存在を挙げた。
「自分は自分に自信があるプレイヤーではないけど、グラウンドに立てないサポートメンバーが自分の気持ちを押し殺してでも常にポジティブな声かけをしてくれました。みんなの言葉が本当に自分の自信に繋がりました」
長田主将は「ベスト8に進めず結果としては悔しいけど、チームの自信になりましたし、次のステージに進める一勝だったと思います」と総括した。
