「地面の力」をもらって目標達成へ。木村星南は「ジャパンにふさわしい選手」目指す。

5本指ソックスで練習する。東海大にいた頃からだ。
木村星南。東芝ブレイブルーパス東京でジャパンラグビーリーグワン2連覇の26歳が笑う。
「個人的な感覚ですけど、普通の靴下よりもいい。僕らは、地面の力を、もらわないといけないので」
その言葉通り、最前列左で組むスクラムでは、対面とぶつかり合って勝つにあたり、大地を足の裏で掴むのが肝だ。足の先端を左右に揺らしながら、自身を取り囲む記者団へ懇切丁寧に説く。
「第1関節で(芝を)握るというトレーニングもしています。親指と他の4本を分離させるとか、1本ずつ順番に(足場につける)とか…。よかったら今度、やってみてください」
話したのは8月15日。参加していた日本代表FW合宿の初日だ。キャンプの意図を即答する。
「絆を深めていくのが第1優先。そのなかで、細かいこと(プレー面での狙い)があります」
クラブの拠点もある府中市内の施設で、スクラムのほかラインアウト、肉弾戦といった、当該ポジションに求められるプレーを磨いた。
特にチームがフォーカスするのは走者への援護。木村がデビューできた、対ウェールズ代表2連戦で挙がった課題のひとつだ。
問題解決のため、今回はジムでのウェイトトレーニングの前にマット上での格闘技風セッションもおこなわれた。身長175センチ、体重105キロのチャレンジャーは言う。
「(コンセプトの)『超速ラグビー』では、サポーターが(ランナーに)速くつくのが(必要)」
今年7月、代表初戦出場を果たし、「もっと試合に出て勝利に貢献したい気持ちは、生まれました」。前回のキャンペーン解散から今度の再始動までの約5週間、代表側に示されたトレーニングメニュー、測定へ挑んだ。
特に筋量アップが求められた。与えられた題目に没頭するうち、胸板が厚くなった。専用の計測器で脇腹をつまんだら、体脂肪の激減も実感できた。
改めて強調する。
「ジャパンにふさわしい選手になりたい思いが、強くなりました」
思い浮かべるのはリーチ マイケル。ブレイブルーパス、直近のジャパンで主将を務めた36歳だ。今回の活動こそ不参加も、ワールドカップ4度出場のFLが万人にとってのロールモデルなのは変わらない。後輩は続ける。
「マイケルさんは、ジャパンでも東芝でもハードワークする。自分も同じようにできるようにしたいです」
直近のターゲットは、国際大会のパシフィック・ネーションズカップ。ジャパンは30日から日本、アメリカで転戦する。
昨年度の同大会では、決勝でフィジー代表に敗れている。現状の世界ランキングで5つ上回る9位の相手を倒すべく、木村は「いかにボールを繋がせないか。常にツーマン(2人がかりの)タックル。ここが大事になる」。ばねと破壊力が売りの猛者を、粘り腰で土俵際へ追い込みたい。