【南アフリカ記者コラム】「選手を無理やり引退させるのは不公平」。スプリングボクスが目指すベテランと若手の融合。

シヤ・コリシは、2027年のワールドカップ・オーストラリア大会で3連覇を目指すスプリングボクスの一員であり続けたいと語った。
ボクスの主将は首の違和感によるケガで今シーズン最初の3試合を欠場したが、大勝したジョージア戦でグリーン&ゴールドのジャージーに袖を通した。
試合序盤に激しい衝突を受けてHIAのチェックを受けるも、無事に戻り、いつも通りエネルギッシュなパフォーマンスをやり遂げた。
34歳となり、ワールドカップを2度制した主将は自身のキャリアが終盤にさしかかっていることを理解しているが、それでも2027年のワールドカップに関わりたいと強調する。
「体の調子は良いです。これからは1年ごと、1試合ごとに様子を見ながらという感じですが、それ(ワールドカップ出場)が最終的な目標です。まだそこにいたいと思っています。ラシー(エラスマス)HCも『36歳でも、36歳の中で一番フィットしていればそれでいい』とはっきり言ってくれています」
「みんなの中で一番フィットしている必要はありません。大事なのは、フィールド上で自分が何を出せるかということです。(2027年に)いまの自分と同じように感じられるのであれば、コーチングスタッフやコンディショニングスタッフ、メディカルチームのおかげで、まだまだやれると思います」
スプリングボクスのアシスタントコーチ、ムズワンディレ・スティックも、選手に引退を強いるのはコーチの仕事ではないと述べ、エラスマスHCの「身体的要件を満たしている限りプレーできる」というこれまでの考えを繰り返した。
「選手を無理やり引退させるのは不公平です」
「私たちの仕事は選手をコーチングすることで、選手が成果を出せば出すほど、彼らはチームに残ります。シヤは良い状態です。シャルク・ブリッツやドウェイン・フェルミューレンの年齢を見てください(ブリッツは日本大会に37歳、フェルミューレンはフランス大会に36歳で出場)。彼らもワールドカップに連れて行きましたが、求めていたパフォーマンスを出し続けてくれました」
「最初のトレーニングキャンプで厳しいフィットネステストをおこなったとき、シヤはチームの中でもトップクラスのスコアを出しました。私たちにとって年齢は本当に問題ではありません。週のトレーニングの負荷に耐えられて、私たちのプログラムについていけるなら、38歳でも40歳でも選ばれます」
一方でエラスムスHCは将来を見据え、多くの新しい選手をスプリングボクスの輪に入れている。
昨年は50人もの選手がボクスでプレーし、2025年もほぼ同じ数がすでに出場している。
コリシはその理由を理解しており、2015年のワールドカップ後に多くのベテラン選手が一気に引退して経験の空白が生まれ、成績が低迷し、世界ランキングも下がった当時を思い出すという。
「今年は4試合ですでに46人が出場しました。選手たちは毎週末プレーしたがりますが、南アフリカラグビーの将来を見据えた計画があるのは理解しています」
「誰だってキャップを獲りたいし、調子が良いうちにプレーしたい。でも、ラシーはいつも『将来のために層の厚さを考えなければならないし、スプリングボクスをより良い状態で次の世代に引き継ぐために選手を入れ替えている』と話してくれます。オープンに話してくれるのが彼の良いところで、『勝つために、適応し、成長し、革新する。でも、チャンスも与える』と言ってくれます」
エラスマスHC自身も、2025年シーズン序盤の戦いぶりにはおおむね満足しているようだ。
ボクスはホームで4試合を戦い、いずれも予想通りの勝利を収めた。バーバリアンズに54-7、イタリアに42-24と45-0、そしてジョージアに55-10で勝利した。
次はラグビーチャンピオンシップのタイトル防衛というより厳しい課題に臨む。
「4試合を見てみると、どの試合もほぼ50点近く取れていました」とエラスムスは語り、「ただ、メンバーを入れ替えれば層は厚くなる一方で、リズムは失われます」とも言った。
過去数年と同様、エラスマスHCはこの4試合でチームを大きくローテーションさせた。しかし、ホームでのラグビーチャンピオンシップ初戦が1か月に迫る中、彼は「もう実験の時期は終わり」と話す。
「オーストラリア戦のために36人のスコッドを発表しますが、その中で試す選手は1人か2人だけ。大部分はもっとも安定していて、私たちの戦い方にフィットする選手たちになります。ラグビーチャンピオンシップは間違いなく一段階上のレベルです」