【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】内から湧いた代表への思い。櫻井綾乃[LO/横河武蔵野アルテミ・スターズ]
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サクラフィフティーンの頼れるLO、櫻井綾乃が2度の大ケガから帰ってきた。
最初の負傷は2021年11月、スコットランド戦だった。いまでは厳罰化されたクロコダイルロールを受
け、左膝の前十字靱帯を断裂した。翌年のW杯出場を逃した。
2年前の9月のフィジー戦でも、同様のシーンで右膝の前十字靱帯と内側靱帯を断裂した。2年ぶりの代
表復帰を果たした4試合目での悲劇。さすがに堪えた。
「正直、一度ラグビーや代表を目指すのを辞めようと思った時期もありました」
もう一度、この場に戻って来られたのは、各方面からの支えがあったからだ。レスリー・マッケンジーHCや鈴木陽子コーチからは、「代表を目指すことを一度辞めていい。無理強いはできない」と言われた。かえって奮い立った。
「あえてそういう言葉をかけていただいたからこそ、自分の内側からもう一度代表に戻りたいというモチベーションが湧いてきたと感じます」
所属する横河武蔵野アルテミ・スターズの提携先である、アトラスターズクリニックにはお世話になった。
濱野武彦さん(現・静岡BR)や田中綾乃さんといった代表に帯同するレベルのトレーナーが親身になってサポートしてくれた。
「再度、受傷しないような体の動きや筋力のつけ方を、すごく長い時間を使って見てくれました」
4月で29歳になった。ここまでの人生、ラグビーに生きてきたといっていい。
群馬県で生まれ育ち、父と兄の影響で3歳から高崎ラグビークラブに通った。「ラグビーは自然と生活に組み込まれていました」。気づけば切っても切り離せない関係になった。
「ラグビーの櫻井さん、ラグビーをやっている綾乃ちゃんみたいな感じで、ラグビーがいろんな交流をさせてくれました」
ラグビーで世界が開けたのは日体大1年時。初めて代表活動に参加した。LOの魅力に取り憑かれたのもこの頃からだ。
有水剛志HC(当時)に勧められて以来、167㌢の身長はこのポジションでは小柄だが、一貫してLOでプレーしてきた。
「LOってかっこいいですよね」の言葉に愛がこもる。
「LOって比較的トライを取ったり、ボールをたくさん持つわけではないですよね。でも、アタックの起点になるラインアウトの要で、スクラムでも実は真ん中で一生懸命押している。縁の下の力持ちみたいなポジションが、私の心をくすぐるんです。よく見たらここのオーバーがポイントになって、相手の人数が少なくなっていたりとか、少しずつ、少しずつチームに貢献し続けられるプレーヤーになりたいとは思っています」
熾烈なポジション争いの中では、身上のハードワークだけでなく、声でも勝負したい。「年齢は関係ないのですが」と断った上で、「これまで先輩方がやってくださっていたことを、次は自分の年代が担ってもいいのではないかと。スクラムの前に、疲れてきた時に、チームに何か一言、声をかける。チームの雰囲気を変えられる選手なりたいです」と語った。
2017年のアイルランド大会以来、2大会ぶりのW杯出場が叶えば「すべてをぶつけるつもりです」。
「自分のためにも、チームのためにも、サクラフィフティーンの躍進に貢献します」
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン7月号(5月23日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は5月15日時点。