国内 2025.05.13

TJ・ペレナラ[リコーブラックラムズ東京/SH]がもたらしたビッグインパクト。記録と記憶を振り返る。

[ 木村大輔 ]
TJ・ペレナラ[リコーブラックラムズ東京/SH]がもたらしたビッグインパクト。記録と記憶を振り返る。
「声」でチームを引っ張るTJ・ペレナラ[BR東京](撮影:福島宏治)

 今季からリコーブラックラムズ東京に加入したTJ・ペレナラの1季目のシーズンが終わった。チームのレギュラーシーズンの戦績は6勝12敗・勝ち点33の7位で、プレーオフ進出はならなかったが、ペレナラの存在とプレーは大きなインパクトをもたらした。

 2024年11月24日のイタリア戦までに、ニュージーランド代表“オールブラックス”として積み重ねた89キャップ。これは1903年から続くオールブラックスのテストマッチの長い歴史の中で、SHとして2番目に大きな数字だ。(1位はトヨタヴェルブリッツ所属のアーロン・スミスの125キャップ)

 ペレナラは2021シーズンに1季限りでNTTドコモレッドハリケーンズでプレーし、チームのベスト8進出に大きく貢献した。昨年8月にブラックラムズとペレナラが3年契約を締結したことが発表され、4年ぶりとなる日本でのプレーが決定。ラグビー王国の歴史に名を残すプレーヤーは12月21日の開幕戦からセンセーショナルな活躍を見せた。

 まず驚くべきは、33歳とは思えぬスタミナとプレータイムだった。ポイントからポイントへ駆けてアタックの起点となるSHは、高い次元のフィットネスが求められるポジションであり、トップレベルのゲームにおいては試合途中でスターターとリザーブを入れ替えることがセオリーとされる。

 ペレナラは今季のレギュラーシーズン全18試合に先発出場した。プレータイムは1403分で、1試合平均にすると77.9分。つまりシーズンを通して、ほぼフル稼働していたことになる。実際に13試合でフルタイムまでプレーを続け、最も出場時間が短かった第14節・S東京ベイ戦も63分間プレーした。(イエローカードを受けた10分間はカウントされていない)

 個人スタッツのトライ6本はチーム内4位で、相手守備陣の裏へ抜けるインテンシティと得点能力も高かった。チームメイトのトライを演出する能力にも長け、トライアシスト16回はリーグのSHの中では日和佐篤(神戸S)の18回に次ぐ数値だ。守備の意識と能力も高く、125回のタックル成功数はSHとして最高値を残している。

 第5節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦はチーム事情でSOとしてプレー。試合には18-26で敗れたがこの日もフル出場し、ラグビープレーヤーとしての総合的なスキルの高さを見せた。

 チームキャプテンのHO武井日向が故障して以降は多くの試合でゲームキャプテンを務め、今季は13試合でチームの先頭に立った。キャプテンの仕事の一つである、レフリーとのコミュニケーションやアピールも積極的におこなう姿が見られた。

 何よりもブラックラムズのグッドインフルエンサーであった。NO8ファカタヴァ アマトは「本当に大きなインパクトを残してくれました」とペレナラがもたらした影響を表現した。異なるポジションながらスキルを学ぶことも多かったようだ。FBアイザック・ルーカスは「チームに自信とリーダーシップをもたらしてくれました」と証言する。

 ハーフ団のコンビを組む機会が多かったSO伊藤耕太郎は、強気の「ハート」の重要性をペレナラから学んだという。オンフィールドのプレーに関しても二人で対話を重ね、より効果的なパフォーマンスに向けた準備を進めてきた。「TJには『自分を信じて、好きにやっていいよ』と言われます」と伊藤が語るように、若きチームメイトの成長を加速させるアプローチをとっていることがうかがえる。

 同じポジションのSH南昂伸は、学生時代から目標とする選手にペレナラを挙げてきた。チームメイトとなったいま、「刺激になっています」と自らのスキルアップへの影響と印象を語っていた。SH髙橋敏也は過去のNZ留学でペレナラと交流があった。身近な存在となった現在もコミュニケーションから得たものを自身の成長へとつなげている。

 5月10日の最終節(三重ホンダヒート戦)終了後、ペレナラは記者会見の場でチームがシーズンを通して遂げた進化について語った。

「シーズン序盤と今日のゲームを見てもらうと、チームとして変わっていると思います。オンフィールドだけではなく毎週の準備や、みんなが持つ『信じる力』『自信』も変わってきたと思います」

 今季、ブラックラムズの中で高まった「自信」は、これからどのような形で実を結ぶのか。来季もペレナラはアグレッシブかつエモーショナルなプレーでチームを鼓舞し続ける。

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