ワイルドナイツの舵を取る。山沢京平が担う責任。

ラグビー選手の山沢京平は、周りが思うほど自分がスキルフルだと思っていないようだ。
身長176センチ、体重84キロの26歳。深谷高時代に高校日本代表となり、明大では1年時からブレイク。ボディーバランスのよさと技巧の多彩さから将来性を期待されてきたが、幾多の賞賛の声にも「へぇ…って感じっす」。自己認識はこうだ。
「本当に、何も思わないです。上手だと思ってないので。…まぁ、試合の時は自信があるんですけど」
本番においては「自信」を持って戦うものの、平時は向上心を絶やさないというわけだ。
いまは埼玉パナソニックワイルドナイツのSOとして、昨年12月から国内リーグワン1部を戦う。
3季連続でファイナリストの名門にあって、長らく正司令塔だった松田力也が昨季限りでトヨタヴェルブリッツへ移った。4学年上の兄で似たプレースタイルの拓也も、いまは故障からの復活を目指している最中だ。
渦中、新たなプレーメーカーの京平は、勉強の日々を過ごしているという。ひとつの選択、ひとつの動きを精査し、改善する。
「反省して、チャレンジして…を、毎試合、毎練習、取り組んでいるところです。」
第11節終了時点で9勝1敗1分。12チーム中首位を走る。3月22日には東京・秩父宮ラグビー場で、前年度王者の東芝ブレイブルーパスとの首位攻防戦に挑む。
「ここからもっとゲームが難しくなる。そんな中、責任感が(求められる)。自分のスキルを上げたい。チームは優勝を目指しますが、先ばかり見ないで練習、試合をひとつひとつレビューする、積み重ねる」
初年度以来の優勝を狙うワイルドナイツは、直近の第11節で初黒星を喫したばかり。15日、敵地のヤマハスタジアムで静岡ブルーレヴズに17-22で惜敗した。総じて得点機を逃した。
その午後も10番をつけた騎士は、「攻めている時に、チームで同じ絵を見るのが大事」と再確認した。
「FWとBKがちょっとばらばらになっていた部分も。(次戦へ)そこの意思統一を」
新たな仕事とも向き合ってきた。
埼玉・熊谷ラグビー場での第9節では、初めてゲーム主将を務めた(対三菱重工相模原ダイナボアーズ/〇39-10)。ブルーレヴズ戦でもその役目を担った。
HOで31歳の坂手淳史主将に適宜、助言や励ましの声をもらいながら、重責を過剰に意識せずに戦う。
「いつもペナルティー後の選択、ゲーム中のコミュニケーションを坂手さんがやってきてくれていた。坂手さんと同じことは、自分は、できない。特別、変なことを思わず、自分ができることをやろう、と。気負いは、ないですね」
堂々とした風情。他者にそう指摘されると、それだけは紳士的に否定した。
「いままでそういう役をやってこなかったから(重さが)わかっていない部分もある。役をもらったことにびびっていないわけではないです」
いまの目標には、「責任を持ったプレーをして、チームに信頼されるプレーヤーになる。あと、自分自身もっとうまくなる」を掲げる。
17日にあった取材機会で繰り返した「責任」の定義を問われると、「自分が関わるプレー、コール、オーガナイズの全部。そこの精度、正確さを突き詰める」と即答した。
「仮にそれ(自身の指示)が間違っていたとしても、それも自信を持って伝えてチームを動かすのが大事…。また、そのコールをする(選んだプレーを遂行する)うえで、自分のスキルが足りていなかったらいい結果にはならない…。責任感、果たしたいです」
チームが点を取り、勝つための舵取りをし続けたい。